情報館設立三五年。その体験をもとに田舎暮らしへのアドバイス田舎暮らし四方山話13 田舎暮らしの住まい
都市生活者が住む田舎の家遠隔地なるが故に、住宅健築の難しさがある田舎暮らしの住まいには、大きく分けて、
「土地を購入して住宅を新築する」「中古住宅を購入する」「農家の空き家や古民家を購入して再生する」の方法がある。

田舎暮らしといえども、快適な住まいでありたいもの。まずは、信州安曇野に住宅を新築した平岩さんの事例から紹介しよう。 東京・品川区に住む平岩さんは、若い頃から山が好きでリタイア後は北アルプスの見える安曇野に移り住みたいと考えていた。
そして、JR大糸線の有明駅から徒歩十五分、一面に水田の広がる穂高川のほとりの分譲地を購入した。
そこからは北西に常念缶が一望でき、平岩さんの希望どおりの土地であった。そこまではよかったが、住宅を新築し、移り住むまでには随分と苦労した。
土地を購入して、すぐに地元の工務店に住宅の建築を依頼した。「夫婦二人で暮らすので、二十八坪位の小さな家を」と希望したが、
日ごろ地元の農家の大きな家を建築している工務店主は、そんな小さな家は造ったことがないという怪訝な顔であった。
初めの出会いから、どこまで自分たちの希望が通るかが不安であったという。 工事は進むが、遠隔地であるため、月に二回現地に赴くのが精一杯である。
やがてほぼ完成したというので、出かけてみて驚いた。部屋から常念岳を眺めて暮らす筈が、その方向に窓がない。
「寒い風の来る北西方向に窓を付けるなんて常識外」という工務店主の弁である。
確かに以前は、すきま風を防ぐため北側の窓は極力小さくしたが、現在はペアガラスのサッシもあり、どちらの方向に窓をつけても問題ない筈である。
また台所は、黒と白の市松模様のタイル壁で、工務店主は「どうです。モダンでしょう」と言うが、寿司屋じゃあるまいしと思う。
そしてトイレや寝室のドアには内鍵がない。これは田舎では当たり前のことという。
その他にもいろいろあるのだが、常念岳が眺められる窓だけは付けて貰って、後は我慢することにした。
都市住宅は、狭い面積を有効に生かして快適に暮らせるよう設計されている。
平岩さんは家事動線も充分配慮されたマンションに長く暮らしてきたため、どうもその工務店主の感覚と合わないのである。
田舎で暮らすなら、自然景観をとり入れた住まいにしたいと思っても、それを理解してもらえないのである。
ときどき現場を見られるならともかく、遠隔地に家を建てることの難しさをつくづく感じたと平岩さんは語る。
平岩さんのような失敗を繰り返さないためには、その工務店が建築した住宅を見せてもらい、こちらの希望する住宅を建てられる工務店であるかどうかをよく見定めることと、細部の打合せもしっかり行なうことが大切である。
次は宮城県の片田舎に家を建てた鎌倉市の小野寺さんの例である。 集落からさほど離れていない五百坪の緩やかな傾斜地の雑木林を購入したが、
住宅建築にあたっては地元には工務店の手づるがない。
そこで首都圏の住宅展示場をいくつか見て回った。なかなかモダンな住宅もあり、気に入ったハウスメーカーの営業マンは、
全国どこでも建てられるので、ぜひうちでやらせてほしいという。
そこと契約したのであるが、実際には一度仙台の提携工務店に下請けされ、仙台からは現地が遠いということで、さらに近くの工務店に孫請けされて建築されたという。
契約した本体価格は確かにその金額であったが、別途工事代とされる造成費や基礎工事代、水道引込み料などが異常に高く、その部分に経費がしわ寄せされたのではと小野寺さんは思わざるをえなかった。
住宅展示場もそれぞれ営業エリアがあり、そこから離れるとこんなことも起こりうるのである。
住宅は建築後のメンテナンスの問題もあり、施工にあたる工務店や大工さんと直接請負契約することが望ましい。
(本部 佐藤彰啓)
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