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長野◆東御市〜小諸市〜御代田町/笑う仁王に福来たる【所長・ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2023年1月28日

▲芸術村公園(東御市八重原)。

いまから25年以上前のことになるが、わたしがふるさと情報館に入社してしばらく経ったころの話だ。

長野県の東側・千曲川と鹿曲川(かくまがわ)の河岸段丘の上に広がる台地状の村に初めて足を運んだことがあった。その名は北御牧村(きたみまきむら)。

伸びやかに田園が広がり至るところに大小のため池がある。その台地は大きく八重原と御牧原に分かれており、役場のある八重原には温泉や芸術村公園、アートビレッジ明神館(みょうじんかん)といった宿泊施設などのほか、近くの村の分譲地の一角には懇意にさせていただいた料理研究家のお住まいもあった。

現在は隣接の旧東部町と合併して東御市(とうみし)となり三万人ほどが暮らしている。そこはまた東部湯の丸高原の南麓に位置した田舎暮らしの人気の高い地域でもある。

▲井上さんの経営するリサイクルショップ「エコ」(長野県小諸市与良町6丁目4、電話0267-26-6318)。

その当時ふるさと情報館の地域店で一緒にやっていた井上さんは、現在国道18号線より一本入った場所でリサイクルショップを経営している。今年開業20年目になるという。月日はあっという間に過ぎていくのだ。それでも移住された方とはいまもメールでのやり取りをしている。

「孫の写真を送ってきたよ」と井上さんは嬉しそうに話す。そのうち売却の話が出るかもしれんな、ということらしい。

リサイクルショップとは聞こえはいいが空き家の後片付けの方が多いという。固定客も少なからずいて昭和レトロなお宝探しに来る人もいらっしゃる。

▲「八ヶ倉(やかくら)」(小諸市加増179-13、電話0267-24-0205)。

「エコ」の近くにはパスタの美味しいイタリアンのお店もある。女性同士の会話がはずみ地元を中心に訪れる人も多いという。ゆったりとしてくつろげるのだろう。この小諸と御代田(みよた)にお店がある。

『田舎暮らしの本』のライター山本一典さんともお付き合いは長い。たまにわたしが取材された折、こんな特集をしたらどうですか?と編集者に話すことがある。できれば山本さんに取材をしてもらいたいと思っているので。

今年は東北の古民家特集を取り上げていただいたことがあった。お住まいの福島から岩手県遠野市までご足労おかけしました。

その雑誌の熱心な読者からこの秋、ご売却相談をいただいた。長野県の御代田町(みよたまち)に物件をお持ちだという。

その方のお話が面白くてなんと3時間以上も話し込んでしまった。10年余りの二地域居住で得たその人なりの田舎暮らしのノウハウだからだ。

▲ノートいっぱいに書き込まれた「御代田日誌」とでも呼べる日記は感動的ですらある。

いわく、『集落内ではあるものの地元に深入りはしない。付き合う人は同じ同好の志を持った人たち(具体的には薪ストーブの会など)。畑の収穫物を農協に出荷する。信州大学の聴講生となって長野市に通う。畑それぞれの土壌のPHを把握する(どこが一番良い立地かなど)。冬場の野菜の貯蔵方法を地元の所有者に聞くこと。

▲倉庫。

建物のリフォームでは土間に薪ストーブを設置する。壁を作りコンセントの数を増やす。オール電化にはしない。北側結露対策と防犯を兼ねて二重サッシとペアガラス。雨戸ではなく片手でひき下ろしのできるシャッターを設置。雨の日の作業やトラクター、耕運機、薪置き場としてコンクリ土間の倉庫を新設等々』。

「楽しみました」とはご主人の弁(この物件は本誌2022年11月号に掲載済み)。

▲真楽寺内エメラルドグリーンの池

そして物件を後にし、山懐にいだかれた真楽寺(しんらくじ)の境内に行ってみた。渾々と水が湧き出る池はエメラルドグリーンだ。神秘さをたたえている。

▲仁王様が柔和な顔で出迎える。

その山門には仁王像が二体。なんと右側の仁王様は笑っていらっしゃる。

笑う門には福来る。新しい一年は戦争も感染症も終結するよう祈らずにはいられない、そんな思いで東信州の名所を後にしたのだった。(八ヶ岳事務所 中村健二)

山梨◆八ヶ岳/新春の候、1月の八ヶ岳事務所【八ヶ岳南麓・たかねの里だより】

この記事の投稿者: 八ヶ岳事務所スタッフ

2023年1月4日

▲珍しく雪が積もった朝。南アルプスの山並みが美しい。(山梨県北杜市)

新年明けましておめでとうございます。

新しい年が迎えられるということは、なんとも嬉しいものです。気持ちが一新し、一つの区切りが自分の中に出来て、また1年のスタートを切ることが出来ます。

気持ちを盛り上げる上で、初日の出を拝みに行くのも良いですよね。

冬の早朝、寒さの厳しい八ヶ岳南麓で外出するには気合が必要です。ぬくぬくとしたお布団の誘惑から逃れることがなんと難しいことか。

初日の出の時間は山梨県では6時55分頃、一日で最も気温が下がる時間帯で、年によってはマイナス8℃くらいまで気温が下がることでしょう。標高が高くなればさらに気温が下がるので、普段の生活では無い寒さの中に出かけるということになります。

北杜市での初日の出のおススメスポットは山梨県立まきば公園です。家から車5分程で行けるというのが個人的な理由ですが、元日に訪れると県外からも多くの車が集まってきます。

標高1400mの八ヶ岳の真ん中に広がる牧場の草原で夏場はやぎやポニーなどの動物とふれあえる場所です。山の中でありながら空が広く感じられ、解放感があることから星空観測にも人気があるようです。

公園からの眺望は素晴らしく、東方向には富士山と秩父連山が広がり、その間あたりから現れる日の出を拝むことが出来ます。

▲極寒の中でみる日の出は美しくあたたかい。(山梨県北杜市)

複雑な山の地形のせいで、日の出の時間は正確ではありません。空は明るくなってくるものの、中々出てこない太陽を、寒さの中じりじりと待ち続けます。

ギリギリまで暖かい車の中で待っている人達もいますが、私はあえて寒い外で、外気を感じながら待つのです。頭の中を過るのは熱いお風呂に入りたいとか、あったかいお雑煮を食べたいとか、もう空が明るいから日の出を見たことにして良いんじゃないかと、家に帰ることばかり。

そんないつ終わるともない時間の中、山から太陽の眩しい光が漏れ出てきたときの嬉しさ。ただ日が昇るのを見に来ただけなのですが、ひと仕事を終えたような満足感が生まれます。

結果に至るまでの過程を味わうことで、より満足感を得られるのではと一人納得する自分でした。

コロナ禍になってからは分からないのですが、甲斐大泉駅の前にある温泉「パノラマの湯」では元日は朝6時から営業し、温泉の中から初日の出が拝めると人気でした。

露天風呂からは富士山も望めるので最高のロケーションとなります。無理せず心も体もリラックスしながら日の出を迎えるもの素敵な経験となりそうです。(八ヶ岳事務所 大久保武文)

山梨◆八ヶ岳/ 努力を重ね、実を結ぶ ~ 新年に寄せて ~【所長・新年のご挨拶】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2023年1月1日

▲コロナ禍で沿道応援がずっと控えられていました。今年こそ全力で応援したいですね。

この三年間は誰しも内省の時間を過ごさざるを得なかったゆえに、甲子園の優勝監督が言った「入学式はおろか卒業式も満足にできなかった子たち」の躍動する姿に心を熱くした人も多かったに違いない。

ポプラ並木が黄色く色づいていたころ、わたしはたまたま出張していた仙台市で全日本大学女子駅伝を初めて応援した。

同郷のランナーが第一走者で出場していることを知り、競技場の芝生席と第一中継所で見届けることができたのだった。

わたしだけではない。遠路札幌や福岡から集まった選手たちを手拍子で迎える仙台市民の温かい応援は、走るという日々の練習ですら密になれなかった選手たちを思いやる気持ちが表われていたように思う。

沿道で応援する人たちの多くは感染対策をしながら極力声を出すような声援もせず、鳴り物もなく、二十六チームの選手全員が走り切るまで拍手を続けていた。その姿勢は「いいね」と素直に思えるものだった。選手だけでなく応援する人たちですら、「集う」ことがこの三年間は容易ではなかったはずだから。

第一走者の選手は浜松市立の中学校を卒業後、仙台市内の強豪校に進んだ。年末の都大路で優勝しスーパールーキーとして今の大学に進学した。その彼女がこの大会のリーフレットの中で、「努力は必ず報われる」と決意を述べている。

わたしも実は昨夏、浜松市の物件に関して彼女の卒業した中学校の前を車で何度も通過している。その「努力」はささやかではあったものの実を結んだ。

思えばぶっちぎりで区間賞を取ったランナーからお褒めの言葉をもらったようなもの、かも知れない。

雨だれに自分の齢を重ねてみれば、努力の月日は決してその人を裏切らないのだ。

さて、新年恒例の箱根駅伝。わたしの母校もなんと五十五年ぶりに予選会を突破し出場の機会を得ることができた。

かの陸上部から入学当初、入部のお声掛をいただいたこともあったが、それも今は昔。今年もテレビの前で全ての出場校を応援させていただきながら、皆様の新年のご多幸をお祈りいたします。(代表取締役 中村 健二)

▲本年もよろしくお願いいたします。

北海道◆北斗市/陸路北海道の玄関口へ 風の丘の住人と出会う~その1~【いくぞ道南!所長・ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2022年12月14日

▲モダンな新函館北斗駅。

東京駅を朝6時台に出発する新幹線はやぶさ1号に乗れば北海道の新函館北斗駅には午前11時前には到着する。それは4時間20分足らずの時間だ。

その間、朝食を取り今日のスケジュールを確認し本を読み音楽配信を聴く。時々車窓に目をやり少しばかり目を閉じていると北海道に到着してしまうのである。

この新幹線駅のある道南の北斗市(ほくとし)とは以前、東京有楽町のふるさと回帰支援センターで(どういう理由かは定かでないが)山梨県北杜市(ほくとし)との共同移住セミナーをやったことがあって、わたしも山梨側の人間として参加したことがあった。その時私なりに感じた印象はとても好意的な市であったということだ。

▲駅構内にあるカフェ「41°」。この場所が北緯41度なのだとわかる。

北斗市も北杜市も風光明媚な場所が多く海の幸・山の幸の宝庫だ。

また、縄文時代の遺跡調査では(道南から北東北にかけてと釈迦堂から八ケ岳山麓にかけての)日本屈指の場所である。

そして先人の培ってきた教会(北斗市トラピスト修道院、北杜市清泉寮)が町のシンボリックな存在ともなっている。蛇足だが両方ともにソフトクリームが有名だ。

静謐な夜の星座と星空には両市ともゆかりが深い。人口はともに四万数千人。

▲北斗市トラピスト修道院とポプラ並木。

いっぽう違いも多くある。

山梨県北杜市は内陸性気候で冬場の晴天率が高く全国一の日照時間を誇る。北海道北斗市は函館湾に面した海洋性気候のため道内では比較的温暖な気候であるともいわれている。

北杜市に居住されている方は標高400メートルから1200メートルの山岳地帯で、北斗市は平野部の海沿いに人口が最も集中している。

北斗市に隣接し毎年7月に行われる函館マラソンはトップアスリートから一般市民ランナーまで人気が高い。いっぽう地元の中高生による北杜市の強歩大会は秋の伝統行事の一つだ。

▲観光客に人気の函館「やきとり弁当」(肉は豚肉です)。

▲朝市の海鮮丼は1500円から2000円ぐらい。この10月以降は特に賑わいを見せている。

買い物はともに特徴ある地元スーパーががんばっているものの、週末には函館市街地や甲府盆地に行かれる方も多い。

北斗市には巨大なセメント工場があるなど産業構造にも違いがある。北杜市にはミネラルウオーターの工場が幾つもあるがいずれも県外資本だ。

不動産の中古市場は別荘や移住者の再売りなどで北杜市の方が圧倒的にバリエーションは多い。北斗市の別荘はこれからというところだが新たな取り組みにその期待度も大きい。その期待のひとつが「風の丘」だ。

▲ 北斗市当別の「風の丘」。

全国に「風の丘」と名付けられた場所は数多い。福祉施設から公園、カフェ、道の駅、さらに樹木葬の墓地までそれこそ幅広く点在している。わたしが担当するエリアにおいても長野県佐久市、岩手県遠野市に「風の丘」がある。

いずれも幹線道路沿いの小高い場所であり田園と周囲の山々を見渡す、風光明媚な立地であり名所でもあるのだ。しかしながら今回ご紹介の北斗市にある「風の丘」はいささかことを異にしている。

▲ 眼下に函館湾。

函館湾に沿って国道228号線(松前国道)を西へ。当別(とうべつ)の漁港の手前を右折し道南いさりび鉄道のガード下をくぐって急坂の丘へ登っていく。なんとそこで一面開けた平坦な台地の上に出るのだ。津軽海峡を眼下に望むその場所はどことなく中世ヨーロッパの古城が建つ海岸沿いの風景をわたしに思わせた。

そこはログハウスが何棟か建ちテラスがありドッグランも喫茶店もある。港から餌を持ち帰ったミサゴの巣が鉄塔の上に作られている。

案内された室内は何と心地よいものだったか。薪ストーブも焚かれているここ北斗市はその後背地に豊かな山林を擁する丸太材の宝庫でもあり、次の引き受け手を静かに待っているようだった。奥の間にはカウンターバーも設えてあり懐かしのLPレコードのストックが壁一面にある。

そのオーナーは満面の笑みをたたえ、「ようこそ、わが北斗の風の丘へ」と私を迎えてくれたのだった。(以下つづく)(道南担当 中村健二)

山梨◆八ヶ岳/寒冷の候、12月の八ヶ岳事務所【八ヶ岳南麓・たかねの里だより】

この記事の投稿者: 八ヶ岳事務所スタッフ

2022年12月8日

▲八ヶ岳を覆う雪雲。(山梨県北杜市)

今年もあと一か月となりました。あっという間だったような、それなりに長かったような。正直何をしたかあまり覚えていない。

学生時代のように、期末テストや運動会、文化祭、部活動といったイベントに追われるような日々であれば記憶に残るのだろうか。

ただ、時間の経過の記憶に残らずとも、季節が年末を教えてくれます。日に日に気温が下がり、風が強くなり、空気が乾燥するにつれ、着るものを厚くしたり、暖房を入れたりとで、否応なく12月を感じられるのです。

日本には四季がある。一年中常夏だと、年末も感じられなくなるのでは。北杜市は冬本番の入り口、12月となりました。

冬の寒さは気温で、ヒシヒシと身体で感じられるのですが、北杜市においては他の数値からも把握することが出来ます。

それは何を隠そう電気料金です。物価高、燃料高が心配な時期には気になる話です。

▲電気使用量と電気代。

グラフは我家の電気使用量と電気代を表したもの。夫婦2人の生活です。新電力のエネオス電気と契約しているので、東京電力より少し安いとのこと。見ていただくと、1月〜3月の3カ月間が突出していることが判ります。普段の月は5千円くらいの電気代が、1月と3月は1万円ちょっと、2月については1万3千円になりました。

これ暖房費と思われるかもしれませんが違うのです。メインの暖房は灯油ストーブと薪ストーブ。コタツもありますが電気使用量は微々たるもの。

つまり暖房以外で大幅に増えているということなのです。暖房以外で冬の間だけ使う電力がありまして、答えは電熱ヒーターです。凍結防止ヒーター、配管ヒーターとも言うようです。

▲人知れず頑張る電熱ヒーター。

家の裏側にいくと水道管や給湯器の配管にグルグルと太いテープが巻いてあり、その中に電熱線が入っています。サーモスタット付きのものが多く、気温が下がるとスイッチが入り発熱し、水道管などの配管を暖めて、暖かくなるとスイッチが止まります。そうすることで水道管の破裂を防いてくれるのですね。

暖かい地域には不要なもの。でも寒冷地には無くてはならないものです。

寒い朝に水道をひねると、給湯器のスイッチを入れてなくても最初に暖かいお湯がでるのは電熱ヒーターが頑張って仕事をしているから。大変シンプルな仕組みの機械なのですが、電気代が高くなるのが玉に瑕です。かといって使わないと、設備が故障してさらに大きな費用がかかる。節約のできない、寒冷地では必要な費用と思っていただくしか無いようです。

代わりといっては何ですが、夏場はエアコンを使わないのでその分、電気が安い…と思うようにしています。

さて、わが家で契約しているエネオス電気ですが、11月より燃料費調整の上限価格の設定を廃止、東京電力より高くなる可能性があると通知がありました。電気使用量が増える1月を前に、電力会社を切り替えるべきか悩む日々です。(八ヶ岳事務所 大久保武文)

山梨◆八ヶ岳/住む場所と趣味のつながり【八ヶ岳スタッフ・日々の暮らしより】

この記事の投稿者: 八ヶ岳事務所スタッフ

2022年12月2日

▲ラジコンカーのイメージ。住んでいる地域により新たな趣味を見つけることで、より豊かな生活を送れそう!

最近、ハマっているのがYouTube。

興味があるネタが雨後の筍のようにワラワラと表示され、気づけば時間を費やしている。とは言え、本要約サイトなど、勉強につながるものも。

その中で、「定年後も生き生きとするには趣味を大切にすると良い」という言葉があった。

確かに趣味が高じて定年後の移住先を北杜市と決める方は多い。登山、釣り、菜園、乗馬、自転車。

移住したら思いっきり趣味を楽しみたいというのは凄く前向きでこちらも嬉しくなります。

住む場所と趣味というのは強いつながりがあるもの。私も沖縄に住んでいた時はカヌー、シュノーケリングと海を中心に遊んでいましたが、北杜市にきてからは登山とドライブが趣味と呼べるものに。

ところ変われば趣味も変わる。そんな私ですが今年は新しい趣味に出会いました。それはラジコンカー。北杜市にラジコンサーキットが開業したのです。

全く今までは考えもしなかった選択肢でしたが、これがやってみるとなかなか奥深い。

こりゃ定年後も楽しめそうだと思う今日この頃です。(八ヶ岳事務所 大久保 武文)

宮城◆加美町/鉤形(クランク)街道と薬莱(ヤクライ)富士【いくぞ東北!所長・ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2022年11月17日

▲加美町の音楽の殿堂・バッハホール。

江戸時代元禄期に松尾芭蕉(1644年~1694年)が陸奥国府(みちのくこくふ)から出羽国へ奥の細道を行脚した仙台出羽街道(現在の国道47号線)はその当時整備されたばかりの、いわば新品の街道だった。くに境の「尿前(しとまえ)の関」は随一の難所ではあったものの、霜月初めまではくに境・鳴子(なるこ)の一級の景勝地として旅人の疲れを湯治場で逗留して癒すにはふさわしい場所だったに違いない。

その一本南側を走る街道が今回の舞台となる中羽前(うぜん)街道なのだ(現347号線)。このルートを使って出羽の大石田河港経由尾花沢から仙台へ向けて北前船による上方物の着物や松前物(北海道)の昆布・海産物などの交易が江戸時代を通じて頻繁に行われてきたのであった。加美町は内陸にあって日本海と太平洋を結ぶ交通の要衝地であったのだ。

当時仙台藩の関所はくに境に夏場だけ軽井沢番所が置かれただけだったが、ここが主要街道であった痕跡が実はいまもなお残っている。347号線を車で行けばすぐにわかる。ひと言でいえば走りにくい。出入りがしにくい。なぜなら町中を走る国道が鉤形なのだ。

こうした事例は山梨県甲府市の国道411号線にも見られる。武田信玄の時代以降に作られた街道筋で、ここも鉤形になっておりいまも大型バスがすれ違うのが難儀する隘路(あいろ)となっている。以前山梨学院大学の法学部の招きで空き家活用術の話をしに行った時に車で通ったことがあり、その時わたしはへんに感心した覚えがある。

▲加美町小野田支所。

▲鳴瀬川が街道と平行に流れる。

さて加美町小野田支所あたりは番所の代わりにこうした隘路、そして街道とほぼ平行に流れる鳴瀬川沿いの一角に伊達家重臣として知られる奥山家に代々仕えた松本家の旧家も建っている。

18世紀半ばの建築時期と見られるこの武家の住まいは手斧がけの柱と梁、竈のある土間と執務と住居を分けた民家のひとつであり、侍屋敷としてもかなり古い時代の遺構。真壁と大壁の使い分けも見事だ。現在では国指定の重要文化財であり質実剛健な構えの中に粋な内装をのぞかせて一見の価値がある(見学は無料)。

▲松本家旧家

▲竈の土間。

▲奥座敷。

この通りと川の両方向に目を光らせる立地はさすがとしか言いようがない。さらにその当時から鳴瀬川の河川が切り開いた肥沃な平野部は周辺地域屈指の穀倉地帯として発展していく。まさに仙台の奥座敷として隣接の岩出山(いわでやま)と共に現在も名を成している。

▲旧道にある公衆電話ボックス。

さらに、国道347号線を左に折れて山に向かっていく。その正面にあるのが薬莱山(やくらいさん)(標高552メートル)だ。その麓はスキー場となっている。地元では「薬莱富士」と呼ばれている。私が行ったその日は天気も悪く霧に霞んでいた。

▲整備された加美町の圃場。加美町は豊かな自然環境の中で世界農業遺産「大崎耕土」に指定されている。

その景色はどことなく富士五湖の本栖湖から静岡県の朝霧高原・まかいの牧場へと向かう西富士道路を走っているような錯覚がしたのが不思議であった。

▲やくらいガーデン。

温泉、地ビールそして「やくらいガーデン」(入園料800円)。高原にふさわしいリゾートアイテムが満載だ。ここなら一日中楽しめそうだ。特にやくらいガーデンは春先から11月まで営業していて、広大な敷地内にはバラ園やハーブガーデン、レストランもある。春の水仙と菜の花、夏のバラ、盛夏のころのひまわり、秋はケイトウ、サルビア、バーベナのじゅうたんが敷き詰められている。

加美町は中新田町(なかにいだまち)のバッハホールと山付きの別荘地だけではなかった。今回の取材では旧街道筋と農業遺産である耕土、そして薬莱山リゾート地と多様な顔を見ることができた一日だった。(宮城・岩手・秋田担当 中村健二)

山梨◆八ヶ岳/立冬の候、11月の八ヶ岳事務所【八ヶ岳南麓・たかねの里だより】

この記事の投稿者: 八ヶ岳事務所スタッフ

2022年11月8日

▲日を浴びて甲斐駒ヶ岳の輪郭が浮かびあがる。(山梨県北杜市)

北杜市は秋のさかりを迎えています。10月終わりから11月中頃にかけて山々が刻々とその表情を変えていきます。

北杜市では桜前線が標高の低いところから高いところへと駆け上がるように時期を変えて進みましたが、秋の紅葉の見ごろも標高に大きく左右され、山の上部から下部へと駆け降りるように進んでいきます。

▲青空の下、紅葉を見上げる。(山梨県北杜市)

地元に住んでいても、紅葉の見ごろをキャッチするのは中々難しいところ。見頃まであと少しかなと思っていて、次に訪れると葉っぱが落ちてしまっているということもしばしば。

紅葉の美しさは刹那的、だからこそ毎年惹かれるのでしょうか。本原稿の作成にあたり、昨年の写真を見返してみると、自然の表情にハッとさせられる、印象的な景色のものが結構ありました。

11月でも前半と後半では植物や木々の表情が大きく変わります。そしてその表情の変わるタイミングというのか、移り変わる瞬間、物事の移り行く過程が哀愁を、美しさを感じさせ、印象的な景色となるのではないでしょうか。

物事の移り変わるタイミング、昼と夜、黄昏時、現世と常世、生と死。季節が移り替わる秋のこの時期、少し感傷的に物事が見えてしまう。

▲夕暮れの空に八ヶ岳。田んぼに静けさが漂う。(山梨県北杜市)

天候も安定しやすいこの時期、ドライブついでに秋の景色を写真におさめてはいかがでしょうか。夕暮れ時の八ヶ岳の山並みは特におすすめです。(八ヶ岳事務所 大久保武文)

【八ヶ岳事務所エリアの物件】
八ヶ岳南麓エリア・・・北杜市高根町、北杜市長坂町、北杜市大泉町、北杜市小淵沢町
韮崎・茅ヶ岳エリア・・・北杜市須玉町、北杜市明野町、韮崎市、甲斐市
武川・白州エリア・・・北杜市白州町、北杜市武川町