「中村さんの座右の銘はなんですか?」年末になるとこんな取材をされることがある。
「祖母が庭先で転んでこれから見舞いなので適当でいいですよ」ある年、そう応えておいたら後日こんな記事になって帰ってきた。
「中村氏の座右の銘は、七転び八起き」
中学の時の卒業文集でクラス一の秀才が受験に対する恐怖心をこう表現していた。
「心に思い描く恐ろしさに比べたら目の前の恐怖などものの数ではない」
これはシェークスピアの『マクベス』の中の一節(第一幕第三場)で、英語表記では次のとおり。
「Present fears Are less than horrible imaginings」
その後彼は名の知れた企業に入り成功を収めたと聞く。うまく恐怖心を乗り越えたのだろうか。
私はと言えば、この一節は座右の銘ではないけれどもいつもどこかで引っかかっている言葉のひとつでもある。
遠州弁で「おそ(ん)がい」という言葉があって、生粋の横浜っ子と麻雀をしたときに、「遅くねーだろー」とよく言われた。でも君、それは違う。「怖い」とか「恐ろしい」といったニュアンス。「この牌を振り込むのは恐んがい!」
諺をひねって、仕事に臨むことがままある。「急がば走れ」とか、「石の上にも三日」とか、「親しき仲こそ礼儀あり」とか、「笑う門にはフグ来たる」など。
俳句をもじって、「裏を見せ表を見せて散る健二」
こうした自虐ネタは意外と処世上、有効な手立てにもなりうるような気がしないでもない。
古典も惹句的表現の宝庫。『徒然草』は齋藤孝教授がおっしゃっているように上達の心構えや気づきの技を説いた書であって、先達の教えに2021年の年末こそ耳を傾けたいところ。
さて、昨年もいろいろありましたが、これまであげた中にはわたしが座右の銘にしているものが実はひとつだけあります。
励み励まされの一年。
本年もどうぞよろしくお願い致します。(八ヶ岳事務所 中村 健二)
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