日本の数多くの地方都市では、人口増加を背景として郊外開発が進み市街地等が拡大していました。そしてこれからは人口減少が見込まれ、一定の人口規模に支えられてきた生活サービス提供が将来困難になりかねないとされています。こうして平成26年8月には「都市再生特別措置法の一部を改正する法律」が施行され、市町村が独自に「立地適正化計画」を策定できるようになりました。
移住者の多い長野県富士見町でも昨年「富士見町立地適正化計画」が策定され、住民が集まりやすい場所で暮らしに必要な機能を利用できる「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」の町づくりが進められています。都会からの田舎暮らしのニーズは、どちらかというと町が期待する「居住誘導区域」からちょっと外れ、ポツンと一軒家とは言わないまでも町の中心地から適度な距離、隣家が少ない自然豊かな地域にあるように思いますが、下水道供給エリア内の居住用住宅は移住・定住促進対策新築住宅補助金の対象(その他要件有)となっています。田舎暮らしの希望立地からは外れることが多いですが、下水道エリア外でも合併浄化槽の設置補助金などを検討できます。
実際に下水道と接続する際は、「受益者負担金」もしくは「受益者分担金」を支払う必要があります。言葉だけではその違いはわかりづらく、農業集落排水の「新規加入金」と一緒に考えると途端にわかりやすくなります。
まず、どちらも不課税で一回限りの支払い。「受益者負担金」は、所有している土地(宅地及び宅地見込地)の登記簿の面積に、1㎡あたり600円を乗じて得た額となります。つまり500㎡の土地なら30万円です。分割して支払うことができますが、負担金を一括でまとめて納めることで最高16%減額が可能です。
一方、「受益者分担金」は一般住宅で55万円、その他の用途の建物で86万円、原則一括納付です。そして農業集落排水の「新規加入金」は「受益者分担金」と全く同じ55万円と86万円。つまり、公共事業として整備された地域が「受益者分担金」、農業集落排水から公共下水へと移管された地域は「受益者負担金」という新名称となっただけで以前の「新規加入金」と同じ金額のままというわけです。
税金で賄われる「下水道施設」は道路や公園などの公共施設と性質が異なり、下水道が整備された人だけが利用するという側面があります。これをすべての住民が納めた税金だけで賄うので、下水道が整備されていない区域の人達にとっては不公平です。そこで税負担の公平性の確保、下水道の整備促進を目的とし、下水道によって利益を受ける人達に建設費の一部を負担してもらうのが、受益者負担金制度の趣旨だそうです。
「受益者負担金」の賦課は一度限りで、その土地に対して完納されている場合(公共枡が設置されます)は、一般的には売買などで権利譲渡されたとしても、再び支払いが発生することはありません。現所有者が分割で支払い途中の場合は残りの支払について注意が必要ですが、そこは我々仲介業者が調査する範囲となります。(本部 星野 努)
※上記は富士見町の受益者負担金・分担金についての説明です。他の市町村、民間の管理会社等で全く違った定義で同様の名称を使用している場合があります。