▲「下部温泉」と「本栖湖」を結ぶ 国道300号線の標識。何かいい。
仕事がら車を運転することが多い。最近はピンポイントで出張先を訪れるため、話し相手もなくただひたすらにハンドルを握りながら目的地を目指すこととなる。五木寛之のエッセイのように左ハンドルで颯爽と風を切るようなドライブに憧れたこともあったけれども、それも今は昔の話なのだ。
基本同乗もさせないし名所などへの寄り道もしない。こうした運転はさぞかし退屈なものと思われるかもしれないが(特に長距離ともなれば)、国道を走る場合、意外にもあるコツを掴めばこの上なく楽しい時間となることがあるから不思議だ。馬上で兵法を練るわけでもないが、わたしの場合は「道の駅」立ち寄りが、その解決策なのだ。
▲「道の駅・しもにた」群馬県甘楽郡下仁田町馬山3766−11
全国には1193駅の「道の駅」があるという。トイレ休憩の合間合間にそのショップをのぞいてみれば、野菜や卵などの特産品や土産物・木工芸品の数々が所狭しと並んでいる。食堂があり、温泉も併設されているところもある。そうしたものを見ているとおおよそその地域の主力品や特産品、あるいはその地域の傾向までもが把握できてしまう。
ところで、「道の駅」にあって高速道路の「サービスエリア」などに絶対置いていないものはなんでしょう?
ご存知の方も多いでしょうが、地酒や地ビール、地ワインなどのアルコール類ですね。(もちろんお持ち帰りが大原則です)これは笑い話だけれども、静岡県のとある「道の駅」で同行の司法書士と食事を取ろうと食堂に入ったときのこと。店員さんから「アルコールをお願いします」と言われ、いきなりアルコール飲料を勧めるとはなんてシュールな「道の駅」だと思い、「わたしはハンドルキーパーですので」ととっさに応えてしまったわたし。その店員と司法書士に大爆笑されました。
▲「道の駅・こぶちさわ」山梨県北杜市小淵沢町2968−1
山梨県内にも21ヶ所の「道の駅」があるが、「おすすめは?」と言われたら文句なく中央市の「道の駅・とよとみ」とわたしは答える。水汲みのメッカ「道の駅・はくしゅう」や知り合いの農家が頑張って出荷している「道の駅・こぶちざわ」も良いが、品種の多さとお姉さん方の活気のすごさでその右に出るものはない。以前、UTY という地元のテレビ局の夕方の情報番組で、「サラリーマンも買いに来る道の駅・とよとみ」として、わたしが店に入っていく姿を撮影し放映までされたこともあるくらいだ。
さて、この身延町にも「道の駅・しもべ」という国道300号線沿いの古関地区に「道の駅」がある。この「300号線」という数字、なかなか良いと思った。ちなみに200号線は福岡県、400号線は茨城県、500号線は大分県にあるが、100号線はなし。「道の駅」にはその地域の情報や歴史・いわれなども展示しているコーナーも多い。
この「道の駅・しもべ」の場合、江戸期享保年間(1716年)に身延で生まれ1000体以上の木造を彫り続けた「木喰(もくじき)上人の里」でもある。簡素な「木喰そば」が有名でこれから本栖湖や富士山を訪ねるツーリストたちを地元のお姉さん方がもてなしている。他にも岩手県住田町の「道の駅・種山ケ原 ぽらん」は、徹頭徹尾宮沢賢治で、近くには『風の又三郎』の像も建立されている。秋田県男鹿市の「道の駅・オガーレ」は日本海の鮮魚をその場でさばいてくれる。そしてこれからも活気のある道の駅は全国的に増えてきているのだ。
▲「道の駅・種山ケ原 ぼらん」岩手県気仙郡住田町世田米子飼沢30−39
この8月29日に、静岡市と甲府市を1時間で結ぶと銘打った自動車専用道路(中部横断道の南部区間)が全線開通した。足掛け20年の歳月が流れたが、これにより周辺自治体はにわかに活気付いているという。ことに身延町は県内の自治体の中でも、移住定住の官民協同組織である「甲斐適生活応援隊」の主要メンバーとして、これまでにも各種相談会に積極的に参加されてきた自治体だ。
▲南巨摩郡にある身延町役場。旧身延町、旧下部町、旧中富町が平成16年に合併して誕生した。
「山里の空き家を県費で改修し、移住者を募る」という画期的な政策が内外に好感されたこともある。町長直属の課に属していた諏訪君という男性が毎回参加していて、訥々(とつとつ)と我がふるさとを語るその姿が、相談会で話題ともなっていた。現在は企画課の中に「空き家バンク」の担当がいて、そのスタッフの話では貸家のない状態が続いているという。静岡、神奈川西湘、愛知三河方面の方々からの引き合いが「殺到している」のだ。
最後にこの町への移住や二地域居住で注意すべき点はただひとつ。急峻な山々、一級河川そうした地形を把握し、ハザードマップを事前にかならず確認しておくこと。(八ヶ岳事務所 中村健二)
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