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北海道◆道東地方/117年の大動脈、この春終止符を【本部スタッフ・全国乗り鉄漫遊記】

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2024年4月16日

▲雄大な夕張山地の中央に位置する芦別岳を背後に、大自然の中を1両だけの根室本線の普通列車が走り抜ける。

今からちょうど25年前の1999年に公開された、故高倉健氏が主演を務めた映画「鉄道員(ぽっぽや)」をご存知だろうか。

妻子に先立たれながらも寡黙に最期まで職務を全うする駅長が主人公の感動作だが、その舞台となったのは北海道のど真ん中に位置する空知郡南富良野町。

そんな人口2300にも満たないこの小さな街から、先月3月31日限りでとある鉄道路線が姿を消した。それが本作のロケとして度々登場したJR根室本線だ。

▲台風災害後は途中の東鹿越止まりとなり、7年半に渡りこの区間で折り返し運転を行ってきた。

道央の滝川駅と道東の根室駅を結ぶこの路線は、全長443,8㎞と道内最長かつ日本最東端へ至る路線だが、2016年8月の台風災害により途中の東鹿越駅〜新得駅(上落合信号場)が不通となっており、元々存廃議論もあったことから復旧せず、運行中の富良野駅〜東鹿越駅も含めた57,6㎞が廃止されてしまった。

この区間は道東開拓の先駆者として1907年(明治40年)に開通し、道央と道東を最速で結ぶ輸送の大動脈として機能してきた。

ところが1981年(昭和56年)に千歳空港(現在の南千歳)〜新得間の短絡ルートとなる石勝線が開通すると状況は一変。特急列車は一夜にして全て石勝線経由となり、根室本線(滝川〜新得)は一気にローカル線へと格下げされ、南富良野町を通る乗客も同時に減少。

かつては林業や石灰石鉱業で栄えた南富良野町も、他の自治体に漏れず人口流出が加速していたところに台風災害が直撃。鉄道での復旧を断念することとなり、4月1日から路線バスが新しい住民の足となった。

JR北海道では2016年11月に「当社単独では維持することが困難な線区について」を発表した。北海道では河川・道路・空港・港湾といった公共インフラは、国土交通省管轄の北海道開発局が管理運営を行っているが、鉄道だけはJR単独での負担となっており、沿線自治体や道としても支援等は行わず自力経営を求められてきた。

ところが民営化から約30年が経過し、景気低迷・人口減少・航空機や高規格道路といったライバルが登場し、これまで耐えていた限界値が突破したのが7年前。つまりJRが民間企業として健全経営をするには、赤字線区については廃止もしくは上下分離し、数少ない黒字線区について必要に応じた設備投資を行う必要があるという悲痛な宣言である。

その赤字線区に当区間が含まれており、これまで2019年から毎年(2022年を除く)道内各地の路線で廃止され、本線区の廃止を以て道内でも深刻な赤字路線は一通り整理されたことになる。

▲空知川をせき止めて作られた人造湖「かなやま湖」は、キャンプ場やラベンダー畑が広がる町の憩いの場。

鉄道会社は公共交通機関でもあるが利益を求める営利企業でもあり、民間企業の一括りには出来ない特殊な立ち位置である。札幌一極集中が進む中、道内の小さな自治体はどのように生き残りを懸けて行くべきか、まずは地元の足から見つめ直すことが地域存続の架け橋だろう。

昨今の不動産仲介業者も倒産が相次ぐ中、この時代で生き残るためにはやはり単独ではなく、チームワークがより一層必要不可欠だ。(本部 高橋瑞希)

北海道◆道南地方/1時間圏の創出による新しいネットワークの構築【本部スタッフ・全国乗り鉄漫遊記】 

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2023年10月20日

▲新函館北斗駅と函館駅を最短15分で結ぶ「はこだてライナー」

今年4月27日より北海道函館市に新市長が就任することになりました。その人物とは大泉潤氏、北海道では誰もが知る有名タレントの実兄にあたる方です。

そう言った点では当選前から注目の選挙戦となりましたが、個人的には選挙公約の中で非常に興味深いものがありました。

それが「北海道新幹線の函館駅乗り入れ案」というもの。

北海道新幹線はルート上の関係で直接函館駅まで乗り入れることが出来ず、現在お隣北斗市の新函館北斗駅まで運行されており、函館駅までの輸送は主に普通/快速「はこだてライナー」が担っています。

しかし2031年3月ダイヤ改正で開業が予定されている北海道新幹線札幌延伸時には、並行在来線としてJR函館本線(函館〜小樽)は廃止され、それと同時に函館駅は特急列車が発着しないローカル駅に格下げすることとなってしまいます。

▲札幌~函館間の特急「北斗」は全て新函館北斗駅に停車し、新幹線からの乗り換え需要を意識したダイヤになっている。
かつて航空機が大衆化するまでは、新千歳空港に代わり北海道の玄関口として多くの人々が行き交っていた函館駅。それが普通列車しか発着しない駅になってしまうのは、時代の流れとはいえ未だに信じられない事態です。

そこで最寄りの新函館北斗駅から函館駅まで新幹線を直通させたらどうかというのが今回の話。この構想はそこまで非現実的な話ではなく、在来線の線路を新幹線が乗り入れるミニ新幹線方式であれば比較的容易と思われます(山形・秋田新幹線で実用化済み)。

コロナも落ち着きインバウンド需要も少しずつ回復し始めたとはいえ、やはり人口減少に歯止めが効かない函館市。近年財政破綻が噂されている京都市とはまた立地条件が異なりますが、観光産業に依存してきた結果、人口流出を食い止め切れていない感は否めません。

これは全国各地の観光都市に限った話ではなく、地方移住を促進したくてもなかなか進まない最大の理由として、地元に働きたい環境が整っていないからと思います。

一方で都会から地方に移住したい気持ちはあっても、仕事が無ければ実際に踏み切る決意は生まれようがありません。

▲北海道新幹線H5系は51本中わずか3本しかいない、見られるとラッキーなラベンダーカラー。
しかし新幹線が開通すると、これまで在来線の特急「北斗」で片道約3時間半かかっていた札幌〜函館間が、新幹線ではなんと約1時間強で結ばれることとなります。ここで函館駅に乗り入れたとしても約1時間20分程度と、これまでとは比較にならない距離感になり、人の流れが大きく変わることが期待されます。

以前から課題とされている道内の札幌一極集中も、札幌圏に移住する必要性が低下し、道南エリアの人口流出を食い止めることにも繋がり、逆に函館がグッと近くなったことで新しいオフィスを検討する企業も増えるのではないでしょうか。

また厳寒期に遅延や運休を頻発する特急や高速バスに代わり、全体の約8割がトンネルの新幹線は物理的に降雪の影響も受けにくいメリットもあります。

乗換という手間は想像以上に心理的負担を感じやすいものです。乗り換えなしの直通というだけで経済効果が変化するといった点に着目した現市長の発想力は、実現出来る出来ないに関わらず素晴らしいアイデアだと思います。

開通まであと7年半とまだまだ先ですが、今後の道南の未来を担う新しい交通手段として、今のうちから新幹線をより便利で信頼を置ける乗り物になってほしいと切に願います。(本部 高橋瑞希)