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山形◆長井市/歴史ある旧家の今を伝える【地方出張・担当旅がらす】

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2020年1月24日

日本海と米沢を結ぶ最上川舟運の港町として栄えた町、長井市に物件情報があって訪問した。物件は長井市歌丸の、田圃に囲まれた堂々たる旧家で、屋敷林の中に、茅葺の母屋、土蔵2棟、畜舎(倉庫)4棟などが並ぶ。高齢になる家主は施設に入所し、家を管理している息子から、大事にしてくれる次の方に引き継ぎたいと弊社にご相談いただいた。土地・建物とも売却のご意向だが、今すぐに引き渡せない事情があるため、売却物件としての広告は出さずに本稿でご紹介とさせていただく。

一体となった宅地部分は550坪、ほかに農地2町5反がある。周囲の民家からは独立した立地で、開放的な田園風景の中に建つ。山形県で茅葺の古民家と田舎暮らしに興味のある方は、近く売り出される予定の当家にも是非一度足を運んでみていただきたい。価格未定だが売主には価格へのこだわりはない。農地はいずれ売却可能で、敷地内の菜園用地だけでも十分な広さがある。

推定築350年、もっとも古い当家の記録は仙台市博物館に所蔵されている伊達家古記録(米沢市史にも収録されている)資料にも見られ、伊達政宗が家督を継いだ天正十二年(1584年)に税にあたる段銭仁百八十文を納めたという。以来代々農業と酪農を営んできたが、現在2町5反の農地は県を通し十年の期限をつけて分家家族などに耕作してもらっている。

今も学術的調査が進められている茅葺の母屋は途中増改築の形跡が残るものの三百年以上前の建築様式に近いという。個性的な屋根の形は、同じ長井市内にある呉服商で、現在は資料館として一般に公開されている「丸大扇屋」によく似ており、この地域の建築の特徴を伺うことができる。トイレ、台所など現代の生活設備が並ぶ同じ空間に、囲炉裏と自在鉤、車箪笥や古い大福帳、鉄瓶に長火鉢も見られ、現在に至るまで連綿と居住されてきたことが分かる。茅は葺き替えのためにストックしておいたものがあり、今年春には葺き替えの予定という。母屋前に建つ2棟の物置は元茅葺だったもので、現在は鋼板葺である。(本部 山中準一)