小生が宮司を勤める遠野市の日出神社に地元工務店の会長さまから、一年がかりで作成した手造りの佳麗な神輿を寄贈頂きました。工務店の会長で、御歳91歳を迎える林崎様は30代で工務店を立ち上げて以来、地元はもとより岩手県沿岸部まで、その腕を買われて住宅から公共事業工事まで幅広く事業を展開してきました。そして寄る御年なみと、住宅建築の近代化が進んだことで、やむなく工務店を数年前に閉業したのです。
現代の住宅建築は、皆様も御存知の通り工法の変革が進み、パネル工法が主流となり、従来からの木材に墨縄を掛けて木造りする技術は、ほとんど使用されなくなっています。大工さん方も、一つ一つの繊細な技術の継承者が、どんどん少なくなってきているようです。かつて、日本が誇ってきた伝統的な技術はもとより、工業界においても日本人ならではの繊細な技術力の伝承の危機だと聞いています。
この林崎様は、40年以上前から当神社の責任役員をお務めになり、ご自分の置き土産として神輿を奉納して御引退されますが、地方の神社は今まで地域の職人さんの御奉仕を頂いて、守り伝えて来たのが実情ですので、林崎様の敬神の篤志に感謝するとともに、これからも地元の方々と共に支え合いながら伝統を守り伝えたいと思う処です。
(みちのく岩手事務所 佐々木 泰文)
投稿者プロフィール
- 元JA職員で都市と田舎を結ぶ取り組みを約15年担当者として務め、退職を機にふるさと情報館・みちのく岩手事務所所長として一念発起。民話の宝庫・岩手県遠野市在住にて、地元神社の神主としての顔もある。令和3年よりデジタルを駆使して後方支援していた息子も全面的に加わり情報発信いたします。