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田舎暮らし四方山話よもやまばなし~その3~【情報館設立35年。その体験をもとに田舎暮らしへのアドバイス】

この記事の投稿者: 総務

2025年10月30日

第3話:田舎の土地事情

◆自分だけのものと言い切れない田舎の土地

「一度見に来てくれませんか?昨年、都会の方にお譲りした土地のことで困ってるんです」。電話の向こうで信州でりんご園を経営している実直な農家の主人の大きな声が響いている。話を要約するとこうだ。数年後に夫の定年を控えた山歩き好きの都会の夫婦が「リタイア後は、北アルプスを眺めながら野菜を自給する暮らしを」と、その農家の所有する200坪の土地を購入した。

集落の外れでりんご畑が点在し、一面に水田が広がる典型的な安曇野の田園風景である。すっかりそのロケーションが気に入り、数年後を夢見ながら契約したのであった。そこまでは良かったが、購入後、その土地をすぐには利用しないからと境界線上に杭を打ち、有刺鉄線を張りめぐらした。

そして、この夏、草丈2m以上の雑草が生い茂り、地元では困った存在になっているという。通学路に面し、自転車の中学生が有刺鉄線で怪我をする。雑草の種は、周囲の畑に飛び散る。このまま冬になれば枯れ草で火災の恐れもというわけである。

「土地は自分のものでも、自分だけのものじゃないということが、都会の人間にはわからないんだよな」。売主は集落の人たちからなぜ都会の知らない者に土地を売ったんだ?と言われて困っているという。

都会の土地に対する感覚と、田舎のそれとは大きな相違があり、特に都会側の人間がその違いに気がついていないことが多い。そのために起こるトラブルも結構多いのである。

都会では、土地は購入して自分名義に所有権登記すれば、自分のものとしてどうしようが自由であるという風潮が強い。しかし田舎では、これは根本的に違う。

自分の土地に、有刺鉄線を張り巡らそうと、ブロック塀で囲もうと、所有者にはお構いなく、地下水は脈々と隣地から隣地へと流れているのであり、そこはタヌキの通る道であるかもしれないのだ。そして、そこに住む人みんなが暗黙の了解のうちにそれを受け入れている。

土と太陽と緑の自然循環の中にあっては、土地はすべての生命体を育む母なる大地であり、それはまさしく連鎖的につながる、どっしりと動かぬ不動産なのである。それは個人が好きなようにどうこうできる財産というよりそこで暮らす人々の共有財産という意味合いが強いのである。

◆土地選びは結婚相手を決めるがごとし

「本当に迷ってしまうんです。あの土地も素敵だし、ここもいいって。決め手がないんです」。

田舎探しをする夫婦から土地の選び方について、しばしば問いかけられる。迷うことは無理もない。唯一無二の土地などこの世にないのである。自分のイメージは頭の中での「青い鳥」であって、現実にはない土地かもしれない。仮にあったとしても、それは他人の土地で売地ではないことが多い。

こんな質問を受けた時、土地選びは結婚相手を決めるのと同じですね。と決って私は答えにならない答えをする。結婚も何かの縁があって今の相手に決めたのであって、ひょっとすると別の人に決めていたかもしれない。

Aさんだったら幸せ、Bさんだったら不幸、とは限らない。Bさんだったらまた別の幸せがあったかもしれない。結婚後どのような家庭を築くかが大切なように、どの土地を選ぶよりも、選んだ土地とどのように付き合うかが大切なのである。

土地は人が働きかけることによってその姿を変える。どんな土地も、愛情のある人の手が加わることによって、優しい表情に変わるものだ。

たとえば、あなたが森の中の少々薄暗い印象の土地を購入したとしよう。あなたが住まうことによって。雑草は刈り取られて、すっきりするだろうし、ほのぼのと明るい雰囲気が漂ようになるだろう。土地の印象は驚くほど変わるはずである。あなたが愛情を込めれば、土地は必ず答えてくれる。

敷地内に低湿地があり、それは一見マイナス要因なのだが、そこをビオトープ(トンボやメダカが生息する空間)として生かした例もある。土地のデメリットも活かし方次第である。

田舎に土地を購入し、一本の木を植える。すると、そこには成長する植物への愛情がめばえる。都会に戻っても、次にその木に会う時はどれほど成長しているだろうかと思いを馳せる。それがその土地への愛着となる。もうその時は「あの土地も素敵だし、この土地もいい」というわけではない。「この土地しかない、唯一無二のもの」となるのである。

結婚も、自ら結婚しようという思わない限り、どんな素敵な相手でも素通りして行くように、土地選びも「いつまでに購入しよう」と心を決めない限り、迷うばかりで「決断できない」のである。(本部 佐藤彰啓)

長野◆諏訪/再び寅年がやってきました【本部スタッフ・ふるさと見聞録】

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2022年1月12日

7年に一度、寅と申の年に行われる「御柱祭(おんばしらさい)」。正式名称は「式年造営御柱大祭(しきねんぞうえいおんばしらさい)」と言います。樹齢200年ほどのモミの巨木を諏訪大社に運び、社殿の四隅に建てる神事で、観光客はもとより、諏訪地方の氏子や親戚など地元がこぞって参加し、熱狂的かつ盛大に行われます。

私事で言えば、当方は年男、家族もすべて寅年生まれで御柱祭に初めて参加したのは妻がお腹に寅年生まれとなる長男がおり、前回は小学1年生でした。今回は小学6年生ですから時の経つ早さに驚きます。年末から新種オミクロン株など懸念がありますが、無事に開催されることを祈念します。
「御柱祭」の日程は公式HPでご確認下さい。(本部 星野 努)

公式HP
http://suwataisha.or.jp/onbashira.html

長野◆富士見町/信濃境・作業の現場より【地域創生・発見地元びと!】

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2019年12月28日

八ヶ岳の南西麓に位置する富士見町は、山梨県との県境、小淵沢町と接し、首都圏から最も近い信州のひとつ。特急停車駅である小淵沢駅からも車で容易で、本数は限られるが富士見駅にも「あずさ号」は停車する。

富士見町役場周辺には生活施設がひと通り揃い、諏訪南インターが都市部との玄関口となり、何より八ヶ岳の眺め、南アルプス、入笠山、そして町名の由来である富士山の眺めが魅力の町である。

近、現代では文筆家や学者などの有識者、そしてふるさと情報館においても移住者・二地域居住の場所として人気が高く、嬉しいことにこの9月、10 月だけでも富士見町だけで6件の契約、引渡しがあった。

その日も町内のログハウスの引渡しが完了し、帰り際に信濃境駅の前を通ると、昨年成約頂いた土蔵物件に何台か車が止まっていた。中から懐かしい顔の大工さんがこちらに気づき、顔を出してくれた。

一人は町内の乙事こと地区の五味工務店の代表・五味広幸さんで、地域・気候風土に合わせたエアサイクルの家づくりを得意としている。また、現在売出し中の若手イケメン大工の平出智崇さんは日本伝統建築技能者の資格のある宮大工で、社寺建築の改修や文化財の保存修理なども担っている。

今回の現場は、一時は撤去取り壊しをオーナーも決断していたが、やはり土蔵を残し、その隣に八ヶ岳を眺める小ぶりな住まいを建て、ゆっくり土蔵を改修していくプランに最終決定したそうだ。

「施主さんはこんな改修はどうか?と夜中でもアイデアを送ってくるほど熱意とバイタリティある。こちらも真剣だよ」と笑う五味さん。今年の7月に自身が建築した住宅が「人生の楽園」でテレビ放映されたそうだ。

「ふるさとさんの見学会に参加して購入されたそうじゃない、消防士さん。周囲に溶け込んで良くやってるよ」知らぬは当方だけだったが、思わぬ成約者さんのご活躍を地元の方から聴けるのは嬉しい限りだ。(本部 星野 努)

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五味工務店(長野県諏訪郡富士見町乙事5812) 
TEL:0266-62-2872
http://www.53komten.com/

長野◆富士見町/レトロな駅前商店街~「スワいち」開催【地域イベント紹介】

この記事の投稿者: ふるさと情報館・本部スタッフ

2017年5月12日

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今年で10周年を迎えたという諏訪エリア一帯で開催される「スワいち」。2月の岡谷のイベントから始まり、下諏訪・上諏訪・茅野、富士見・原・八ヶ岳エリアと各地域で開催されている。「スワいち」は諏訪6市町村の「おいしいもの・たのしいこと」が集まった会場がつながるイベントとのこと。平成24年度の国土交通省「地域づくり表彰」の最高賞・国土交通大臣賞を受賞し(国土交通省HPより)新しく移住しお店を開いた方も参加され、その裾野を広げている。

来たる5月13日(土)10時~16時でJR富士見駅前の商店街で「スワいち」が開催される模様。ちょっとレトロな駅前道路の店舗ですが、覗いてみると新しいコンセプトのお店が増えていて、イベント時はどうなるか楽しみ。

今年の開催には間に合いませんが、ふるさと情報館でも次月号で商店街の物件をご紹介予定。DIY好きで駅前でちょっとしたお店を検討中の方、諏訪の地域おこしイベントに心躍る方は、来年のために予習されてみては?

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詳細はfacebookページ スワいち富士見・原・八ヶ岳
https://www.facebook.com/suwaichifujimi

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信州◆富士見町/八ヶ岳西麓・富士見から見る富士山【信州諏訪ぐん!ぐん!】

この記事の投稿者: 富士見・原村案内人/伊藤 やよい

2017年1月25日

葛窪

諏訪郡富士見町は昭和30年、旧富士見村、境村、本郷村、落合村の四ヶ村が合併して生まれた町です。今でもこの旧村の地域感覚は御柱祭に生きています。東に八ヶ岳、西に南アルプスと高い山々に挟まれた地形ではありますが、その名のとおり、それぞれの連峰の谷間から富士山を望むことができます。

「富士見」という地名は関東に多く存在しますが、諏訪郡富士見町は、信州で一番よく富士山が見えることから来ているようです。農作業をしてふと腰をあげたときに仰ぎ見る、農村ならではのシチュエーションが心癒されます。私は富士見発祥の石屋に嫁ぎましたので、お墓をよく見て回ります。そんな中、やはり癒されるのは山の風景。富士見のお墓は開放的な田園の中など、山々の眺望に優れたところに建っているのが多く、富士山まで見えるところもよくあります。

比較的標高の高いところがそのビューポイントなので、裾野までしっかり望むことができ、遠くにあるわりには大きく見えます。お墓から見る富士山は、特別な感じがします。昔の人たちもこうして霊峰富士を望みながら、先祖への感謝の気持ちを表していたのでしょう。

詩人尾崎喜八も『自註 富士見高原詩集』で「別荘の森の向こうの丘のなぞえに、一箇所小さい墓地があった」とその情景の美しさや墓参りをする人々の穏やかな心情をつづっています。富士山は大地から天へ向かって合掌している形、また見てる人みんなに合掌している形。どんなに高くても謙虚な気持ちを忘れない姿の象徴なのだそうです。

標高3776m。ミナナム、(あんな姿に)ミナナロー。 新しい年を迎え、富士見の悦に合掌。 (富士見・原村案内人 伊藤 やよい)