▲湯川沿いにライトアップされるため、夜の東山温泉は意外と明るい。
東北地方随一の歴史城下町である会津若松市は、市内に2箇所温泉街を抱える県内有数の温泉都市でもあります。
1つ目はひまわり畑と風力発電所のある会津布引山を源流とした、阿賀川へ注ぐ湯川沿いに立ち並ぶ開湯1300年の歴史を誇る東山温泉。江戸時代には鶴ヶ城から東へ4㎞という好立地から、会津藩の奥座敷として栄え、山形県の湯野浜温泉(鶴岡市)・上山温泉(上山市)と共に奥羽三楽郷と呼ばれました。
2つ目は南会津郡下郷町との間に建設された大川ダム・若郷湖の下流にある、阿賀川の渓谷沿いに開かれた風光明媚な芦ノ牧温泉。近年では社会現象を巻き起こした大人気アニメ「鬼滅の刃」で登場した無限城のモデルとされたホテル「大川荘」が、聖地巡礼スポットとしてコロナ禍後の観光客呼び戻しに一役買ったといいます。
▲東山温泉は様々な病に効く万能湯として、江戸時代より湯治場として栄えた。
この2つの温泉地に共通している点といえば、開湯1200〜1300年の長い歴史、川沿いにある渓谷美とマッチした温泉街、栃木〜福島にかけて多い「塩」にまつわる地質の塩化物温泉、そして何よりバブル期に倒産した廃墟ホテルが目に付く点でしょう。
日本は戦後旅行ブームにより全国各地に温泉ホテルが建設されたものの、バブル崩壊・リーマンショック・コロナ禍と、景気悪化により大口団体客を失ったことで経営が立ち行かなくなり、会社倒産で所有者不在になった廃墟ホテル群が社会問題となっています。
こういった建物は老朽化による倒壊の危険性、治安の悪化、美観の低下など様々な課題が現れるものの、地方自治体としては特定危険空き家のように、行政代執行後に解体費を請求しようとしても請求先そのものが消滅しており、現在の財政状況からの解体費の捻出は市民からの理解を得られず、にっちもさっちもいかないのが現状。
▲芦ノ牧温泉は阿賀川の渓谷美を楽しめるため、冬はより一層美しさを増す。
そこで会津若松市では景観向上に向けた財源確保を理由に、今年10月1日より10年間、既存の入湯税150円から350円へと大幅に値上げすることになりました。1人頭200円の湯船貯金が、鄙びた温泉街を生まれ変わらせてくれる救世主となることを切に願います。(本部 髙橋瑞希)
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