先月号にマダニの話があり、続けざまに「害虫」の話では本誌購読者が減ってしまうかもしれないが、私も初めて自然豊かな田舎ならではの洗礼にあった。
所有者が現地を特定できない売却依頼。記憶頼りの手書き地図で探しだす困難なミッション。山に精通した地元の方の導きもあって、役場や開拓林の管理人夫妻、近隣にある元村長の土地など、聞き込みを進めていくのは謎解きパズルのよう。驚くほどの夕立が止み、疲労困憊でついに手書き地図の目印の白いプレハブを発見。車が入れないこの裏山の未舗装の道の先が現地のはず。
「このあたりはヒルが出るから気をつけて」確かに足が取られるほどジメジメしてうす暗い山道。結局少し進んでみたものの、途中道路が竹林によって阻まれ、その先は断念せざるを得なかった。
案内人の方の家に戻り、苦労話に花が咲く。最近調子が悪いというパソコンの設定をしながら談笑していると、私の足元に丸々と肥えた二匹のヤマビルが落ちた。
痛みは全くない。
とにかく驚いた。
浴室を使わせてもらい、慌ててズボンを脱いだ。
「弟切草」という薬草をもらい傷口に塗ってみる。
ズボンの中にはもう一匹いて、息を吹きかけるとしゃくとり虫のように頭を左右に振っていた。
(本部 星野 努)