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山梨◆八ヶ岳/惜春の候、5月のお知らせ【八ヶ岳南麓・たかねの里だより】

この記事の投稿者: 八ヶ岳事務所スタッフ

2021年5月1日

▲道の駅南きよさと。鯉のぼり500匹が大空高く舞い上がる。4月上旬~5月中旬頃。(北杜市高根町)

ゴールデンウィークのなか日、時刻は夕方。清里から須玉IC をつなぐ国道141号線、車道には観光を終え、家路へ向かう車が連なり、ノロノロと進む。高原の強い日差しが弱まり、顔の火照りが治まってくる。少し日焼けをしている事に気づく。

ふと、道の脇に目を向けると、道と平行した峡谷に、長い長いロープが張られ、沢山の数の鯉のぼりがバタバタと泳いでいる。一つのロープだけでもかなりの数の鯉のぼりだ。それが何本も谷間に張られ、鯉のぼりが渓谷の空を埋め尽くしている。昼から夜へ変わる、黄昏時、心が少し曖昧になる時刻。いきなり現れた鯉のぼりの大群に、現実感を欠いた気持ちになる。

鯉のぼりの下には何か大きな建物があるようだ。なんの建物だろうか。疑問に思いつつも、前の車の動きに合わせ、車を前に進めた。2011年のゴールデンウィーク、北杜市を訪れた時の記憶だ。

▲混み合う峠道(イメージ写真)

道の駅「南きよさと」毎年恒例の鯉のぼりの写真を見ながらふと思いだした。記憶の底に沈んでいた風景だ。東日本大震災の起きたその年、自分は東京の狛江市に住んでいた。最寄り駅は小田急線の喜多見駅。震災後の落ち着かない雰囲気の中で、ゴールデンウィークに旅行に行くか悩み、直前で選んだのが人から勧められた清里。初めての北杜市を訪れたのがその時だった。

残念なことに、北杜市の第一印象は曖昧なものだ。何処に行ったのかあまり覚えていないのだ。牧場に行ったのは覚えている。今から思うと、あれは「まきば公園」だったのだろうか。車が一杯で駐車するのに苦労した。お店の中も人でいっぱいだ。あれは「清泉寮」だったのか。

▲5月上旬頃に田んぼの水張が始まる。奥に富士山。(北杜市長坂町)

木造の広い食堂で「ほうとう」を食べた。とても美味しかった。あれは何処だったのか。何より面白いのが、山を見た記憶が無いのだ。「八ヶ岳」も「南アルプス」も記憶の中には無い。北杜市の印象は、「観光客で溢れた高原」といったところだった。ゴールデンウィークに行ったのだから、騒がしくて当然なのだが。北杜市に惹かれるのはもう少し時間が経ってからとなる。

観光で訪れるのと、実際にそこで暮らすでは、見えてくるものが全く違うのかもしれない。私の好きなフレーズに、「暮らすように旅をする」というものがある。じっくりと時間をかけ旅先を過ごすということだろう。地元のスーパーに行ったり、休憩では無く、コーヒーを味わうためにお店に入ったり。主要道路から一歩、脇道に入り、なんとも無い場所を散歩したり。そうすることで、その人の中に立ち上がってくる景色というものもあるのだろう。少なくとも私は、最初の訪問では、北杜市の景色が大して見えていなかったと思う。鯉のぼりは素敵だったけど。

5月のゴールデンウィークの時期、北杜市に居を構える私のお勧めスポットは、水を張った田んぼの景色だ。夕方の黄昏時、静けさとの中、ピンクの空を映す田園はとても魅力的だ。観光道路から一歩、脇道に入ることで見えてくる景色の一つだ。(八ヶ岳事務所 大久保 武文)

▲黄昏時に空の色を映す水田。(北杜市高根町)

まきば公園