ニュース以外で見る私の数少ない番組の一つNHKの『ブラタモリ』。タモリさんの博識と冗談、草彅さんの落ち着いたナレーション、そして現地の方々の分かり易い説明が上手く交差する番組構成が好きです。
その番組で「親不知(おやしらず)」地域を特集していました。地元・新潟県人にとっては、言わずと知れた「新潟県」と「富山県」との境にある交通の難所。立山連山が海まで続き、高いところでは高さ400mある断崖絶壁は今でこそ景勝地と言われています。ただその昔、越後と越中を命を懸けないと通れない、「親も子も、自分のことを守るだけで精一杯」からきた地名。西から市振地区までを「親不知」東の勝山地区までが「子不知(こしらず)」とされ、合わせて「親不知子不知」です。
番組を見て驚いたのは、荒波打ち寄せる崖下、通るタイミングが悪いと波に攫われる岩場が歴とした「加賀街道」であったことです。また偶然にも水上勉さんの小説『越後つついし親不知』を読んでいた時であり、この回はとても興味を憶えました。
昭和63年の北陸道開通以前は、断崖にへばり付くように通る国道8号線が幹線でしたが、そこは今でも高所恐怖症の人は通れないでしょう。このコラムを書いたのは黒部市で取引の最中でもあり、3つの偶然が重なった気運だったのかと、ペンを執りました。(本部 金澤和宏)
▲海に突き出た北陸道と国道8号線。その間の岩場が歴とした街道「加賀街道」だったとは驚き。