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岩手◆盛岡市/もりおか町家物語館 ~ 蔵が作り出す街並み ~ 【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年8月31日

皆さんは〝蔵のある家”と聞くとどういうイメージを持たれるでしょうか?

豪邸?お金持ち?お城?など・・・歴史のある名家を思い浮かべるかもしれませんが、田舎で古民家の取り扱いをしていると〝蔵のある家”によく出会います。

蔵の中には金銀財宝はなく、当時は米などの農産物の貯蔵用に建てられたものが物置として使われていた場合がほとんどです。みちのく岩手事務所がある岩手県遠野市は、江戸時代に遠野南部氏1万2000石の城下町として栄えていました。遠野駅や市役所周辺の市街地は、その歴史の趣を残した街並み作りがされています。

▲鍋倉城址から見下ろす遠野市街地。

事務所のすぐ裏手にあたる「蔵の道ひろば」は、リフォームされた土蔵などの趣がある建物の中に芝生が敷かれた公園となっており、イベント会場や観光の休憩スポットとなっています。かつて南部氏が治めた盛岡藩の中心にも、古い建物を活かした街並みづくりによって観光スポットになっている場所があります。それが今回ご紹介する盛岡市鉈屋町(なたやちょう)の「もりおか町家物語館」です。

▲蔵の道ひろば。左手の建物は綺麗な公衆トイレ。

この施設は、盛岡地区で最も歴史のある蔵元の一つで2006年まで酒造りが行われていた「岩手川」の鉈屋町工場の酒蔵を改修し、2014年に「もりおか町家物語館」として開館されました。母屋・文庫蔵・浜藤の酒蔵・大正蔵の4棟の建物の他、下屋の通路や屋外の広場を含めた6つのエリアで構成されています。

▲もりおか町家物語館。

文庫蔵だった建物は展示スペースになっており、原敬元内閣総理大臣をはじめとした岩手の偉人や歴史の資料が常時並べられている他、2階は絵本などがあるキッズコーナーになっており、お子様連れでも楽しめる空間になっています。

続きの母屋へ入ると、高い吹き抜けの見事な和室が目に入ります。畳の上も見学OK、上り口の下駄箱に上靴を入れてお邪魔します。昔懐かしの引き出しのたくさんついた階段を登ると、2階の和室にはこれまた懐かしい家電製品や食事のサンプルの置いてある部屋も、まるでタイムスリップしたかのような〝映える” 写真が撮れる事間違いなしです。

▲見事な造りの母屋。階段は急だが登りたくなる。

▲選べるアイテムで、撮影会や寸劇が始まる事間違いなし。

続いて「大正蔵」を見てみましょう。大正時代に建てられたこの建物は、大きな貯蔵樽を置くのに合わせて作られたため1階の天井が高く、開放的な造りになっています。そのおかげもあり1階部分の「時空(とき )の商店街」はまるで昔の商店街がそのままアーケード街になったような空間になっています。

▲時空の商店街。軽食や民芸品販売、酒造りの歴史の展示も楽しめる。

2階は展示スペースっとなっており、企画展が開催されている時には合わせて見学が可能です。最後に紹介する建物は浜藤の酒蔵。江戸時代に建てられたこの建物は、現在は酒蔵の歴史をつづったパネルなどが展示される浜藤(はまとう)ギャラリーとして開放され、舞台機能を持った浜藤(はまとう)ホールは音楽や演劇のイベント会場として貸し出されています。

土蔵を改修した建物の中で聴く音楽は格別で、演奏や歌声がダイレクトに心に響いてくるようです。先に紹介した遠野の蔵の道ひろばでも土蔵をリノベーションした飲食店での音楽ライブを何度も聞かせていただいており、土壁と音楽の相性の良さを改めて感じました。

▲浜藤ホール。この日は音楽のライブが開催されていた。

みちのく岩手事務所が取り扱った物件にも、土蔵をお洒落なくつろぎ空間に改装し、音楽を楽しんでおられた方もいました。 「蔵つき物件?」「何に使うの?」「要らないよ」と思うような物件でも、引き継ぐ買い手さん次第では価値のある素敵な場所に変身するかもしれませんね。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

もりおか町家物語館 https://machiya.iwate-arts.jp/
電話番号:019-654-2911/FAX:019-654-2913
住 所:盛岡市鉈屋町10番8号
休業日:毎月第4火曜日(その日が祝日の場合は、その翌日)及び12月29日から1月3日
営業時間:午前9時から午後7時(最終入場 午後6時30分)
*浜藤ホール(浜藤の酒蔵)は利用時のみ午前9時から午後9時30分


 

岩手◆遠野市/遠野パドロン ~ 新しいビール農業の挑戦 ~ 【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年7月23日

▲遠野ホップ収穫祭で販売された遠野パドロンフリット。

日本有数のホップの産地・岩手県遠野市。毎年秋にはキリンビール株式会社から遠野産のホップを使用した「一番搾りとれたてホップ生ビール」が発売され、全国の食卓に彩を添えます。古くから原料のホップの産地として知られてきた遠野市の中で、近年ビールのおつまみにピッタリなある野菜の生産が行われています。それが今回紹介する「遠野パドロン」です。

▲遠野パドロン(500g)

パドロンとは・・・あまり耳に馴染みのないこのパドロンという野菜、見た目は細いピーマンのような印象ですが、シシトウガラシの一種で、原産地となるスペインにある地名(Padron)が由来になっているそうです。

で、どのように食すのか?どんな味なのか?ビールとどう合うのか?という話になってくるわけですが、私がパドロンの虜になるきっかけとなったフリットは作り方が多少難しいため、家庭で調理する場合はシンプルに素揚げにするのがおススメです。

生産者さんのレシピ通り170℃の油で30~45秒ほど転がしながらサッと揚げれば、最高のおつまみの完成です。味については表現が難しいのですが、ピーマンのような苦みはなく、皆さんご想像のトウガラシのようにビリビリと辛いわけでもなく、主張は強くないけれどもとにかくビールが飲みたくなる、ススム味です。しかし流石にシシトウの仲間、中には稀にピリッと辛い「当たり」もあるので、油断は禁物です。

▲吉田代表と共に奮闘する奥さんの美保子さん。収穫中です。

それにしても、そんなスペイン原産のパドロンがどうして遠野で生産、ブランド化されて広まってきたのか?という疑問が出てくるはずです。そこで今回は遠野パドロンの生産者、遠野市青笹町の農業法人BEER EXPERIENCE(ビアエクスペリエンス)株式会社さんに伺ってお話を聞いてきました。

現地についてまず一番に感じた事。「建物、デカッ!」施設は普段通る道から見える場所にあり、テレビのニュースやSNS でも見て知ってはいたつもりでしたが、実際に行ってその目で見るとやっぱり違います。ハウスの規模、温度や水の管理方法、全てが先進的で国内のそれとは思えないほど質実共に大規模な施設でした。

それでも収穫や袋詰めはやはりヒトの手仕事。会社では10数人の方が働いているそうです。その中で選別袋詰め作業をされていた方から話を伺ったところ、なんとお一人の方は、以前ふるさと情報館の仲介で遠野に移住して来られた方、もうお一人は本誌『月刊ふるさとネットワーク』のラーバニスト訪問に寄稿してくれたことがある方でした。なんという偶然?と驚くとともに、この仕事のやりがいを再認識した瞬間でもありました。

▲数年前に訪れた時は他野菜のビニールハウスだった。

BEEREXPERIENCEの歴史は2008年に代表を務める吉田敦史さんが奥様の美保子さんの実家である青笹町(あおざさちょう)でキュウリやトマトの栽培をしたところからスタート。2012年に露地栽培の小さな畑でパドロンの栽培を開始。2018年に会社を設立、ホップと遠野パドロンの栽培を本格化するため他野菜の栽培を終了。2019年からホップはドイツの栽培方法へのチャレンジを、遠野パドロンは現在のオランダ式の高規格栽培ハウスでの栽培を開始しています。

▲パドロン生産工場内部。開閉可能な屋根は高く、とにかく広い。

▲パドロンの実が次々と実る。

▲袋詰めは手作業。移住者の二方は忙しい中でも話を聞かせてくれた。

日本産ホップ生産、遠野パドロン生産、遠野ビアツーリズムの3つの事業を柱とした「ビール農業」を展開、「日本のビアカルチャーをもっとおもしろく」をモットーに日々奮闘中です。(会社紹介より抜粋)

今回紹介した遠野パドロン他商品のお求めやイベント出店情報、遠野ビアツーリズムへの参加申し込みはBEER EXPERIENCEホームページまで。ホップ生産によりビールの文化が根付いた遠野に一から新しい文化として加わった「遠野パドロン」。ビールを飲まれない方も是非一度お試しを。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

BEER EXPERIENCEホームページ
https://www.beerexperience.jp/

岩手◆盛岡市/一岩・ICHIGAN J2いわてグルージャ盛岡【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年6月14日

今から20年前となる2002年の6月、日本は空前の盛り上がりの中にありました。オリンピックに並ぶ世界的な大イベント、サッカーのワールドカップが日本と韓国の共同という形で開催され、日本代表チームも本大会初勝利と初のベスト16進出を決めた歴史的な大会でした。

日本で男子のプロサッカーリーグであるJ リーグが開幕したのが1993年。わずか10のクラブチームから始まったリーグは、現在はJ1、J2、J3あわせて計58のチームが参加する大きなリーグとなり、全国の地域の発展を支える一つのコンテンツとなっています。

岩手にも社会人サッカーリーグを経て2014年よりJ3に参入し、昨年2位になった事で〝昇鶴”して今シーズンからJ2の舞台で奮闘しているチームがあります。それが「いわてグルージャ盛岡」です。

〝グルージャ”はスペイン語で〝鶴”という意味で、南部家の家紋の鶴に由来しており、方言の〝じゃじゃじゃ”や盛岡三大の一つである〝じゃじゃ麺”も取り入れているそうです。

2022年シーズンもクラブを率いるのは3年目となる秋田豊監督。ワールドカップ初出場となったフランス大会と2002年の日韓大会の日本代表メンバー23人に名を連ねた名DFです。J2挑戦の年となった今シーズン、グルージャは開幕戦となる3月5日のアウェイ戦に見事勝利、3月の5試合を2勝1敗2分けと上々のスタートを切ります。しかしホームで苦戦が続き、ゴールデンウイーク中の本拠地いわぎんスタジアムでの試合も落としてしまい、しばらくは残留をかけた戦いが続きそうです。

それでも、スタジアムには老若男女たくさんのサポーターが駆け付け、手拍子や太鼓でチームを応援します。以前のように声を出しての応援が出来るようになるのはまだ先かもしれませんが、その分ピッチ上の選手達の声がダイレクトに聞こえ、必死で走り回っている姿からはこちらが勇気をもらえます。

参加22チームと最もチーム数の多いJ2リーグは、年間で42試合というサッカーとしては過密なスケジュール。様々な面で苦しい戦いが続くと思いますが、それだけたくさんの人に岩手の事を知ってもらえるチャンスもあります。チームもサポーターも「一岩」となって最後まで戦い抜ける事を信じています。

岩手のチームとしてはプロバスケットボールB3リーグに所属する岩手ビッグブルズや、ラグビーのジャパンラグビーリーグワンに所属する釜石シーウエイブスRFC などもあります。シーウエイブスの本拠地釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムは、2019年のラグビーワールドカップの会場にも選ばれ、残念ながら台風の影響で試合は実現しませんでしたが、各種イベントやサッカーの試合などにも使われて復興のシンボルとして地域に根付いてきています。

10年先、20年先はどんなスポーツが流行して地域を盛り上げているのか?それは20年前の日韓ワールドカップの時に、将来岩手にサッカーのプロクラブが出来る事なんて予想も出来なかったように、想像は難しいですが、声を出して笑顔で平和に競い合う場が残ってくれる事を願います。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

岩手◆花巻市/復活のマルカンビル大食堂 ~ 箸で食べるソフトクリーム ~【みちのく岩手・新遠野物語】 

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年5月24日

▲階段の踊り場には全国のファンから感謝の気持ちと閉店を惜しむ寄せ書きが貼られている。

デパート、百貨店――――。その定義はちゃんと存在するようですが、近年の大型ショッピングモール等の進出もあり、その区別をあえて意識する人は少なくなったのではないでしょうか?私が幼少の頃はちょっと大きなスーパーも〝デパート”だと思っていたものです。岩手県にもカワトク(川徳百貨店)と並び、古くから多くの人に愛されてきたデパートがありました。それがマルカン百貨店です。

▲花巻市中心部に建つマルカンビル。窓のある6階部分が大食堂となる。

――――ありました、と過去形にさせていただいたマルカンには、紹介する上で欠かせない物語があります。マルカン百貨店が現在の〝マルカンビル”で営業を始めたのは1973年。最盛期には屋上に遊園地、近隣にボウリング場やカラオケボックスなどの複合店舗も展開していましたが時代の流れと共に閉店。そして2016年6月、前年の耐震診断で不適合の診断を受けたビルも閉鎖が決定し、43年の歴史に幕を下ろしたのです。

マルカンが閉店する!!という衝撃の知らせは岩手県内で大きな話題になり、全国のニュースで等でも取り上げられました。その歴史のあるマルカンビルが存続・復活へ向かうきっかけになったのは、意外にも地元の高校生達による存続を求める署名活動だったそうです。そこへ若手経営者が賛同して存続プロジェクトが立ち上がり、動きは一気に広まりました。

▲マルカンビル大食堂。昭和のデパートの食堂の雰囲気そのままだ。

しかし、当然のように老朽化した建物を残すには多くの問題、とりわけ改修費の課題が大きな壁となりました。クラウドファンディングを行ったところ、なんと2億円を超える協力金が集まり、2017年の2月20日、閉店発表からわずか8か月で見事復活を果たしたのです。

なぜそこまで多くの閉店を惜しむ声、存続を願う声が集まったのか?その魅力の中心にあったのがビル6階の大食堂です。「可能な限りそのままの形で存続させる」その言葉通り、昭和を感じさせるレトロな雰囲気をそのままに〝マルカンビル大食堂”は復活したのです。

6階でエレベーターのドアが開くと、手前両側に食品サンプルの並ぶショーケースが目に飛び込みます。同時に正面にはレジに並ぶお客さんの列。休日の昼の時間帯にはこの行列が階段、5階から4階くらいまで続くため、エレベーターで6階まで行ったのに階段を下らなければならない事態になります。そのため階段の踊り場にもメニュー表が貼られており、待ち時間にもラーメンや洋食、寿司など全部で100種類以上のメニューの中から迷って選ぶ楽しみがあります。

▲マルカンビル大食堂からの展望。花巻市の市街地が見渡せる。

ようやくレジで食券を購入したら、560ある席から好きな場所を選んで座ります。人気の席はやはり見晴らしの良い窓際の席でしょうか。花巻の街を見渡せる他、天気の良い日は遠くに山地や透き通った空を望む事ができます。ホールで接客をしてくれるのはウエイトレスさん。そうです。〝古き良き昭和のウエイトレスさんの制服を着たウエイトレスさん”です。

その他食器や内装、もちろん料理の味をふくめて、1960年代から変わらない雰囲気をそのまま感じる事ができます。料理を待っている時間に周りを見ると、家族連れから若いカップル、老若男女問わず本当に幅広い層のお客さんが食事を楽しんでいます。その中で、数あるメニューの中から多くのお客さんが注文しているメニューがある事に気がつくはずです。

▲定番のナポリかつ 870円

▲名物ソフトクリーム 230円

マルカンビル大食堂名物の〝10段巻きソフトクリーム”です!高さ約25㎝、割り箸を使って食べるこのソフトクリームは、ウエイトレスさん達が運ぶトレイの上にたくさん乗せられ、各席へ次々と配られていきます。他にもボリュームたっぷり定番のナポリかつや辛口のあんかけが人気のマルカンラーメンなど、迷った時はコレというメニューもあります。

マルカンビルは現在6階の大食堂の他、駄菓子屋やカフェが入る1階と、2階と地下1階の一部のみ営業しており、マルカングループの経営店舗は別にありますが、若い有志が残し引き継いだマルカンビル大食堂、皆さんも是非一度足を運んでみてください。
(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

岩手◆遠野/SL銀河 ~ 賢治が描いた夢の世界へ 【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年4月8日

▲(2014年ナイトクルーズ時/めがね橋)まさに” 銀河のプラットホーム”。

2021年11月、岩手県民にとって少し残念なニュースが入ってきました。沿岸地域の復興と沿線地域の活性化を目指して活躍してきた鉄道「SL 銀河」が、2023年の5月ごろをもってその運行を終了すると発表されたのです。

SL 銀河の機関車は昭和15年に製造られたC58形蒸気機関車239号機。その後約30年の間、当時の宮古機関区を中心に岩手県内を走っていた車両で、一度引退して以降は2014年の4月にSL 銀河として復元運行されるまでは盛岡市にある交通公園に保存されていました。

運行終了まで残り1年あまりとなったSL 銀河ですが、つい先日2022年の運行予定が発表されました。SL 銀河が走るのは、作家・宮沢賢治の生誕の地として知られる花巻市と沿岸の鉄の街・釜石市とをつなぐJR 釜石線です。

釜石線は他の少子高齢化地域のローカル線の例にもれず利用者が年々減少し、本数は2時間に1本、駅もほとんどが無人駅、1両編成のワンマンカーも全く珍しくない〝ザ・田舎の路線”です。

▲2015年のクリスマスクルーズ。パノラマビュー(JR 東日本HP)

「銀河ドリームライン」の愛称名がつけられている釜石線は、その全ての駅にもエスペラント語の愛称がついており、みちのく岩手事務所のすぐ近くの遠野駅にはフォルクローロ(Folkloro =民話)、撮影の名所「めがね橋」近くの宮守駅にはガラクシーアカーヨ(Galaksia Kajo=銀河のプラットホーム)というお洒落な愛称が付けられています。

銀河を想像させる青が映える4両の客車には宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に登場する星座や動物が描かれ、黒光りの機関車がそれらを力強く引っ張ります。その雄大な姿と自然とのコントラストは非常に美しく、運行の時期になると全国から多くのカメラマンが撮影に訪れます。

また、沿線の街や道の駅などでは、毎年運行に合わせた観光イベントやSLフォトコンテスト等が開催され、めがね橋を通過するこれぞ銀河鉄道!という写真はもちろん、菜の花畑や郷土芸能などのコラボレーション、中には田んぼのあぜ道を馬に乗ってSL と並んで疾走するものもあり、甲乙つけがたい素晴らしい作品ばかりです。

そして観光客や地域住民を楽しませる〝音”。機関車ならではの汽笛の音は、ホームから走り出す列車を見送る人々を興奮させ、地域に鳴り響く活躍を聞く住民に〝自分も頑張ろう!”と勇気を与えてくれる大切な存在なのです。

見て美しい、撮って嬉しい、聞いて盛り上がるSL 銀河ですが、もちろん車両の中も凄いんです。内装は宮沢賢治の生きた明治・大正時代を思わせる造りになっており、ギャラリーでは賢治の作品の世界観を存分に味わうことができます。1号車には列車としては世界初となる光学式プラネタリウムも搭載しており、日常とは違う賢治が描いた夢の世界が体験できます。

最後はやっぱり〝のってたのしい列車”なんですね。SL 銀河は来年5月で運行終了の予定となりましたが、理由は客車の方の老朽化で、JR 盛岡支社では新たな観光列車も検討中との事です。皆さんもそれまでにぜひSL 銀河のご利用を、また、今後も岩手の列車を応援よろしくお願いします!
(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

岩手◆遠野市/三陸沿岸道路が開通しています【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年3月14日

▲田野畑村(たのはたむら)の景勝地・北山崎(きたやまざき)。沿岸北部の海岸段丘を一望できる。

昨年2021年12月18日、ついにこの時が来ました。三陸沿岸道路の全線開通です。岩手県の久慈IC~譜代IC間の開通により、青森県八戸市から宮城県仙台市までの太平洋沿岸部を1本で貫く、総延長359㎞の三陸沿岸道路が完成したのです。

みちのく岩手事務所がある遠野市からも沿岸部への移動が大変便利になり、自身がこれまで岩手県内で一番移動に時間がかかると感じていた『あまちゃん』の舞台、沿岸北部の久慈市にも2時間半ほど、南も宮城県の気仙沼や石巻はもちろん、東北一の都市である仙台へも内陸の東北自動車道を利用するルートに代わる選択肢ができました。

※東北の自動車道地図(国交省管轄ページより)

岩手県の面積は15280㎡と北海道に次いで2番目の大きさ。車で岩手を訪れた、または通過した事がある方であればその広さや長さを体感した事があるでしょう。さらに沿岸部は隆起海岸が発達した北部にリアス式海岸で知られる南部と海岸線が非常に入り組んでおり、太平洋に面する海岸線をピーンと伸ばした距離は700㎞を超えるとの事。東京から直線距離で北は盛岡、西は広島まで到達する長さになります。

これまで沿岸部の主要道路だった国道45号線も、その地形に倣って曲がり道が多く、高低差もあるため海岸なのに峠越えのような道のりでした。一方、新たにできたその三陸沿岸道路は、大部分が海を見下ろす高い場所に架けられており、時間距離の面でも心の面でもだいぶゆとりをもって運転する事ができます。ただ、積雪はあまりない地域ではありますが天候による路面状況への注意が必要なのと、海からの強い横風に煽られる事もあるので安全運転を心がけましょう。

▲宮古市(みやこし)の浄土ヶ浜(じょうどがはま)。さっぱ船遊覧ではカモメやウミネコが同乗してくる事も。

▲釜石市の釜石大観音。釜石中央インターチェンジ。

私自身も昨年の暮れから2回ほど石巻市の物件調査で三陸沿岸道路を利用させていただきました。石巻市へは以前からも何度か足を運んでいるのですが、新しい道路ができるたびにその変化に驚かされます。市街地へは今では遠野市の自宅から140㎞足らず、三陸沿岸道の無料区間を使い2時間ちょっとで行く事ができます。

石巻には市街地を見渡す事ができるイチオシスポット、「日和山公園(ひよりやまこうえん)」があります。また、高台にあるこの公園からは、岩手県中心部を流れる北上川の河口が見下ろせ、その中州には仮面ライダーやサイボーグ007で知られる漫画家・石ノ森章太郎の石ノ森漫画館があるのも見てとる事ができます。

▲日和山公園。頂上には神社があり、海や市街地を見渡せる。

岩手県沿岸部には、八戸や仙台から三陸海岸道路を利用できるようになった他、盛岡と宮古、花巻と釜石をそれぞれつなぐ道路も全線開通したため、内陸を通る東北自動車道からのアクセスも非常に便利になりました。また、現段階ではそのほとんどが無料区間となっておりますので、岩手にお越しの際は是非ご利用ください。まだまだカーナビに出ない道路も多いですし、サービスエリアやトイレ、ガソリンスタンドもありませんので、事前に確認等をされることをお勧めします。

みちのく岩手事務所では今後もっと沿岸部の新規物件調査、案内を拡充させていけたらと考えております。どうぞよろしくお願いします。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

▲北上川の河口。中央の白い変わった形の建物が石ノ森漫画館。

岩手◆遠野/市民の舞台「遠野物語ファンタジー」【みちのく岩手・新遠野物語】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年2月12日

▲ファンタジー旗揚げ会。

新年を迎えて1、2月、みちのく岩手事務所がある遠野市は真冬日が数日続いたり気温がマイナス2桁を記録したり、毎年一番寒さの厳しい時期となります。そんな極寒の遠野にも、毎年〝春を呼ぶ?行事として親しまれている行事があります。それが市民の舞台「遠野物語ファンタジー(以下:ファンタジー)」です。

「ファンタジー」の起源は、昭和46年に市の複合施設である「遠野市民センター」が完成した際に当時の青年会を中心につくられ、第1回目の公演が開催されたのは昭和51年と昭和59年の第9回公演からは官民一体の制作委員会が組織され、文字通り「市民の舞台」となりました。「ファンタジー」はこれまで幾多の困難に直面するも試行錯誤をしながら1度も欠かす事なく開催されており、令和4年の公演が第47回目の舞台となります。

今年の脚本は遠野市在住の萩野友理恵さん作の「きつねの絵筆」。第47回目となる令和4年は2月の19日の公演と20日に2公演の3公演となります。「ファンタジー」は脚本のみならず舞台監督やキャスト、スタッフまで、遠野市民から募集して作り上げられます。

▲第47回市民の舞台 遠野物語ファンタジー「きつねの絵筆」。

毎年新しい顔ぶれがある中、もう何年も続けて参加しているベテランの人や、前回はキャストで出演していたけれど裏方の仕事も経験してみたいという人、初めてのキャストでいきなり主役?を見事にやってのける方もいます。

ところで、皆さんは毎年の舞台のスタートはどの段階だと思いますか?

「ファンタジー」は例年、公演の前年12月に初めてキャストや各スタッフ、組織委員会が顔を合わせる「旗揚げ会」が開かれます。今回もポスターのお披露目、市長による激励、それぞれの自己紹介と抱負の発表などが行われます。12月のうちから脚本の読み合わせが始まるキャスト、年明けから動き出す大道具・小道具・衣装・美術、舞台での稽古から合わせに入る化粧・床山・音響・照明、リハーサルや本番では舞台転換や会場係や駐車場係、また、「遠野物語ファンタジー」の特徴である劇中に取り入れられる郷土芸能やバレエ、市民バンドによる作曲から生演奏、少年少女もふくむ合唱隊の皆さんなど、総勢400人を超える仲間が公演を成功させるために一つになります。

そうしてむかえる本番。みんなやれることはやってきた。あとは自信を持ってそれぞれの役割をこなすだけ?とは言え、舞台裏は物凄い緊張感に包まれます。「上手くできるだろうか?」「失敗しないだろうか?」「お客さんはどのくらい来てくれているだろうか?」「笑ってくれるだろうか?」みんな一生懸命頑張ってきた分、不安も期待も大きくなるようです。

▲大道具がセットを作り、美術スタッフが絵を入れる(過去作品)。

「ファンタジー」の台詞はほぼ全て遠野弁です。濁音多めで、単語も短め。もちろん翻訳や説明などありません。それでも劇を通して伝わる温かさ、面白さ、もの悲しさ。お客さんのリアクションがキャストや裏方にも還り、最後に「遠野物語ファンタジー」の歌『偲しきょう郷の歓よろこび』をみんなで歌う時には、会場は大きな感動に包まれます。

「ファンタジー」は遠野市外からの反響も良く、昨年の10月には岩手県知事より「いわて暮らしの文化特別知事表彰」を受賞しております。遠野市では同時期に1月号で紹介したどべっこ祭りや昔ばなし祭りも開催されます。春を待つ民話の里・遠野を感じにいらしてください。

最後に、「ファンタジー」を成功させた後の打ち上げでは、みんな口々に「来年は自分は・・・」、「次の脚本は・・・」と先の事について話をします。つまり、この舞台に始まりも終わりもない、これからも伝えられ続いていくのが「遠野物語ファンタジー」なのです。(みちのく岩手事務所 佐々木 敬文)

▲本番前の会場。ステージ前からの生演奏と合唱が観客を惹きつける(過去作品)。

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第47回市民の舞台「遠野物語ファンタジー」
「きつねの絵筆」 令和4年2月19日、20日
※今年はコロナ感染拡大のため中止となりました。
遠野市民センター大ホール (一財)遠野市教育文化振興財団
https://tonojikan.jp/event/0219/
チケットの払い戻しについては、遠野市教育文化振興財団のホームページをご覧ください。
http://www.tono-ecf.or.jp/news/
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◆◆日常雑記◆◆

昨年末に宮城県の某温泉に宿泊した時のことです。硫黄の匂いの強い温泉らしいお湯につかって満足して翌朝の食事の時でした。突然火災報知器が鳴り始めて、火災を知らせる一斉放送が流れ出しましたのです。

職員さん方は落ち着いた表情で、「只今確認中ですので、分かり次第ご案内します」との話でしたが、一向に警報器と避難を誘導の録音声は止まず、職員による説明も、誘導もありません。せっかくの食事も味気なく終えて、不安な気持ちで部屋に戻って着替えやら片付等をしている最中も、全館の警報とアナウンスは続きました。

チェックアウトの時には警報等は収まっていましたが、それでも事情説明がないままなので、帰りにフロントで聞きましたら、涼しい顔で「結露による警報機の誤作動でした」との説明です。プロの仕事としては、お客様への説明が一番先と思うのですが、この対応にはがっかりしました。

何処かの「オオカミ少年」にならねば良いがと思うとともに、自分はお客様のお気持ちを最優先にと改めて思いました。
(みちのく岩手事務所 佐々木 泰文)

※写真と内容は直接関係ありません。

岩手◆遠野/遠野ふるさと村 ~どべっこ祭り~【みちのく岩手・新遠野ものがたり】

この記事の投稿者: みちのく岩手事務所/ 佐々木 泰文・佐々木 敬文 

2022年1月8日

▲遠野ふるさと村入口。どべっこ祭りののぼり旗が並ぶ。

新年あけましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました。
本年もみちのく岩手事務所をよろしくお願いいたします。

さて、唐突ですが皆さんは「どべっこ」という言葉を聞いた事がありますか?最下位の・・・子?という予想もありそうな雰囲気ですが、「どべっこ」とは遠野の方言で「濁り酒=どぶろく」の事を指します。岩手県遠野市は、自家製の酒類の製造が可能な日本のふるさと再生特区(通称どぶろく特区)として知られ、農村のおもてなしを体験していただく活動が盛んに行われています。各所で古き良き日本のふるさとを感じる事が出来る遠野ですが、その中でも今回は附馬牛町(つきもうしちょう)にある「遠野ふるさと村」を紹介いたします。

約100台駐車可能な駐車場から、整備された石畳づくりの道を少し上りビジターセンター風樹舎(ふうじゅしゃ)へ。レストランやお土産コーナーがあり、遠野のさまざまな情報についても係員の方が親切に案内してくれます。入村や体験プログラムの受付もこちらから。入村の受付を済ませたら、いよいよ村内に入ります。

▲村内の池越しに田園や曲がり家の風景が広がる。

遠野物語の「マヨヒガの森」を思わせる遊歩道を通り抜け、門前(かどまえ)と呼ばれる門をくぐると、時代を忘れるような集落の風景が一面に広がります。村内では「まぶりっと」と呼ばれる案内役が、来村されたお客様に様々なおもてなしをしてくれます。「まぶりっと」、なにやら温かみを感じる言葉がまた登場しましたが、これももちろん「遠野弁」で、遠野に伝わる伝統文化を「守る人」の事を意味します。

その「まぶりっと衆」によって守られてきた集落の風景は他に類をみないもので、「軍士官兵衛」や「真田丸」などの大河ドラマ、映画の撮影場所としても度々使用されます。先述の風樹舎や村内施設にも、有名人のサイン色紙や撮影のエピソードも紹介されており、好きな作品の「聖地巡礼」に来られる方もいるようです。

▲当時の生活が思い浮かぶ風景。

曲がり家をはじめとした村内の各建物には中に入って見学することが可能で、曲がった木材を巧みに使って建てられた「川前別家(かわまえべっけ)」や、入ってすぐにドンっと大きな藁人形のある〝大工(だいく)どん」など、建てられた時代(江戸期~明治中期)や住んでいた人によって様々な特徴を持っています。

一番大きな「肝煎(きもいり=庄屋)」の家は、これぞ正に「南部まがり家」!といった構えで、厩ではみんなの人気者、白馬の白雪が生活しています。村では年間を通して様々なイベントが行わますので、ふるさと村ホームページ等でチェックして、合わせて参加すれば遠野の魅力を一層味わえる事間違いなしです。

▲ザ・南部まがり家!厩には村のアイドル「白雪 」。

ここで冒頭の「どべっこ」の話に戻りますが、遠野ふるさと村ではこの冬、2年ぶりとなる「遠野どべっこ祭り」が開催されています。曲がり家の中で遠野のどぶろく、田舎料理の味、語部(かたりべ)による昔話、郷土芸能を堪能できるこのイベントは人数限定の完全予約制、市内の宿泊施設の「たかむろ水光園」や「あえりあ遠野」と連携した宿泊パックもあるようですので、興味を持たれた方は早めの予約お問い合わせをお勧めします。

▲風情のある囲炉裏と土間からの屋内。

遠野市観光協会では、冬季期間のイベントを「遠野ふゆまつり」として公式サイト「遠野時間」で紹介しています。どべっこ祭りに日程が合わないという方も、遠野の冬はイベントが盛りだくさんですので、要チェックです!

寒さが厳しい冬も魅力いっぱいの東北地方、遠野。お越しの際はぜひ温かい格好でいらしてください。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)

▲第21回遠野どべっこ祭り。予約詳細は「遠野ふるさと村」で検索。

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