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岩手◆一関市(本寺)・奥州市(水沢江刺)もちとあてるいとナイアガラ【いくぞ北東北・所長ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2020年12月20日

▲雪の本寺地区。

「荘園」っておぼえていますか?

奈良時代、時の朝廷が農地の拡大を図るため、地域の豪族等有力者が新たに開墾した土地の私有化を促したことに始まり、平安時代には全国の社寺に属する領民が開墾した土地だといわれています。

日本史の教科書では、その後の「守護・地頭」、「武士」の台頭というカテゴリーで語られてきました。そんな過去の遺物的な荘園が、ここ岩手県一関には当時そのままに残されているといいます。場所は本寺(ほんでら)地区(かつては骨寺(ほねでら))。名勝地・厳美渓(げんびけい)を過ぎたあたり、里山と磐井川(いわいがわ)が独特の景観を醸し出している地区で、かつての平泉・中尊寺の荘園が当時の地図そのままにいまも広がっています。

実はいま、この地を「中尊寺世界遺産の構成群」として再登録に向けて地元の有志たちが精力的に活動しています。本寺にあった中学校が2018年3月に閉校しました。当社の成約者もその校門近くにいらっしゃいます。

その閉校間近の中学校に通う女子中学生を主人公にした映画『もち』(脚本・監督小松真弓、上映時間61分、2020年)をこの夏地元一関市の「一関シネプラザ」で観ました。客席150人ほどの小劇場で、東京の岩波ホールやユーロスペースにも似た空間はわたしにとっては久しぶりに心地良いものでした。

降りしきる雪の中で主人公のユナと祖父がもちをつくシーンが印象的で、本寺ではなんと年に50回以上ももちを食べる風習があると、その祖父は言います。まもなくそこを巣立つ少女にもその習慣はどこかでかならず受け継がれていくものであると、わたしもどこかで信じています。本寺村荘園遺跡がこれからも続いていくように・・・。

▲もち料理・「道の駅厳美渓」にて。8種類のもちと大根おろし。隣接して市立博物館がある。

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国道4号線沿いにある岩手銀行あてるい支店(ローンプラザあてるい、奥州市水沢)で決済が行われた。その名前を聞いたとたん、えっ?地名として残っていることにわたしは少なからず驚いたのだ。「あてるい」は漢字だと「阿弖流爲」。

平安時代初頭の9世紀前半ごろまで、この北上平野のあたり一帯を治めていた蝦夷(えみし)の族長の名だ。大和朝廷の支配を確立するため、その任を得て東北地方に遠征した征夷大将軍・坂上田村麻呂と対峙し、その後帰降した。同志のモレとともに京の都に送られた彼は、河内国で斬首され帰らぬ人となったという。

そんないわれのある「あてるい」だが、受付の行員にわたしはそのとき尋ねてみたのだった。「もちろん、歴史的にみてこの地にゆかりある方ではありますけれども、わたしたちは普通に地名として使わせていただいております」。

わたしは岩手銀行あてるい支店の預金口座をその場で作ったのだった。

この10月1日より東北新幹線水沢江刺駅では、いまの奥州市出身で2013(平成25)年の暮れに亡くなられたミュージシャン・大瀧詠一の功績を称え、名盤『A LONG VACATION』の中の代表曲である「君は天然色」(作詞は松本隆)が地元の有志たちの粘り強い活動のおかげで、発車メロディーとして流されることとなった。

盛岡方面の下りはツンと尖らせた唇で、なにごとかを企んでいるという出だし、仙台方面の上りは松本隆が一番に歌詞ができたというサビの部分だ。君との想い出はモノクロではなくカラーにしてくれと、切ない言葉が滲みる。乗降客には「この曲で勇気をもらった」と好評だという(発車メロディーに歌詞は付きません)。

この名盤の最後を飾るのが「さらばシベリア鉄道」。冷ややかな心の自分であっても、別れた恋人に想いを届けようとする。それは12月の旅人に託されるのだが、わたしには花巻の土沢駅を12月3日に南サザンクロス十字星に向けて旅立ったジョバンニたちの姿に重なってくるように思えてくる。

銀河鉄道を生んだ岩手の土壌はシベリア鉄道に引き継がれ、発車のメロディーがいまも鳴り続けているのだった。(北東北担当 中村 健二)

▲東北新幹線水沢江刺駅にて。