▲蔵王町こけし館(入館料は300円)
東北地方を代表する民芸品といえばやはり「こけし」の右に出るものはないにように思う。蔵王町遠刈田温泉(ざおうまちとおがったせん)で物件の所有者と打ち合わせをする前、「蔵王町こけし館」に寄ってみて驚いた。その数の「多さ」と「多様性」にである。
ふつう「こけし」といえば頭が大きくなで肩で、一直線に伸びた胴の愛らしい姿を思い浮かべるが、同じ宮城県内でもこの「こけし」の発祥地といわれる遠刈田や「こけし」の生産量日本一の鳴子(なるこ)そして名湯の作並(さくなみ)や秋保(あきう)などの各温泉地などのほか、岩手県の南部系や山形蔵王系によっても違いがあるのだ。姿・胴・頭・瞼(二重か一重か)・鼻(丸鼻か猫鼻か)などはそれぞれの地域によって特徴があり、しかも体系的に作られてきたという。
秋田県の皆瀬村(現湯沢市)木地山系の「こけし」はなんと頭頂部に赤いリボンがつけられているらしい。「こけし」工人の心意気が感じられて良いですね。ちなみに「こけし」の樹種は東北地方に自生する「みずき」がもっとも多く使われるという。その理由は心材辺材とも白色か黄白色で、木の肌目が緻密であるからだとも。
▲展示されているこけしたち。
遠刈田温泉から十数キロ南下すると「宮(みや)」という地区がある。その地名のいわれとなったのが十世紀の『延喜式』にも名を連ね、伊達家家臣で白石(しろいし)城主片倉家の総守護神の「刈田峯(かったみね)神社」だといわれる。刈田峯とはこれまでにもたびたび噴火を繰り返してきた蔵王連山のことである(蔵王町ジオパーク推進室)。
また、「白鳥(しらとり)大明神」の別名を持っており、まさにそれは『古事記』の神話的世界なのだ。生き別れとなったヤマトタケルの子が成人し、やがて生まれ故郷に白鳥として舞い戻って帰ってきたことに由来するという。そんな話を教えてくれたのが、遅い昼食をどこで取ろうかと車を走らせていた時にたまたま寄った高台のレストランのオーナーだった。名前を我妻(あがつま)さんという。
この辺りではよく聞くお名前だが、わたしとしては『民法総則』(岩波書店刊)の著者である我妻(わがつま)栄先生(山形県米沢市出身)を思い出してしまう苦い思い出のある名字なのだ。このレストランのある辺り一帯は、蔵王連山の東側を流れる松川の段丘地帯で、背後に蔵王連山の一角をなす青麻山(あおそさん)(標高799m)がそびえる。その東端に位置し、そこだけ舌状に飛び出した高低差のある丘陵地となっているのが特徴だ。
その後、店舗建築にあたり事前に町の教育委員会による遺跡発掘が行われた。その結果、なんといまから四千七百年前の縄文中期後葉の囲炉裏を持つ竪穴住居跡七軒のほか、土器や石器が発見されたのだった(「根方(ねかた)A 遺跡」)。ここにはひとつの集落が形成されていたのである。
近隣の松川沿いの河岸段丘にもこのほかの縄文遺跡が発掘されており、その当時の人々の暮らしぶりがうかがえる。見晴らしの利くこうした場所を選ぶセンスというか、縄文人はあらためてすごいなと感心させられるほどの場所である。
▲ corrot 蔵王町宮字持長地104-3 電話0224-26-8565
farmer’s cafe corrot.
このファーマーズ・カフェ「corrot(コロット)」では鶏卵農家である我妻さんのたまごを使った絶品料理が味わえる。雌鶏の産むたまごの数を少なくすることによって濃厚な黄身になるという。口コミでそうした評判を聞きつけた人たちが来てくれるようになり、その日も平日の午後遅くにもかかわらずテーブル席はほぼ埋まっていた。
▲この渾身の一皿(税込1380円)。ランチは11:00~14:30(水休)
宮城県には移住定住に積極的な市町村が多い。わたし的にはそういった印象があり、今後このコーナーでも随時取り上げていきたいと思っている。この蔵王町もそのひとつだ。仙台方面からは車で一時間程度。蔵王連山の南東側に広がる町域には別荘やペンション、レストランも数多い。面積は百五十三平方キロメートル(東京二十三区の約四分の一)あり、一万一千四百人ほどが暮らしている。
遠刈田温泉(高原地帯)から宮地区(田園地帯)まで標高差が大きいのも特徴だ。別荘地には有名なチーズ工場があり冬場もレストランや直売所がオープンしている。町役場の窓口は庁舎二階にあるまちづくり推進課が担当している。「住むなら蔵王だ!!」として移住定住ガイドブックを市のHP からもダウンロードできる。丁寧な職員の対応が心強い。(宮城・岩手・秋田担当 中村健二)
お問い合わせは蔵王町まちづくり推進課へ
宮城県刈田郡蔵王町大字円田字西浦北10番地
電 話:0224-33-2212(町づくり推進課・直通)
電 話:0224-33-3284(環境政策課・直通)
メールでの問い合わせも可