▲ファンタジー旗揚げ会。
新年を迎えて1、2月、みちのく岩手事務所がある遠野市は真冬日が数日続いたり気温がマイナス2桁を記録したり、毎年一番寒さの厳しい時期となります。そんな極寒の遠野にも、毎年〝春を呼ぶ?行事として親しまれている行事があります。それが市民の舞台「遠野物語ファンタジー(以下:ファンタジー)」です。
「ファンタジー」の起源は、昭和46年に市の複合施設である「遠野市民センター」が完成した際に当時の青年会を中心につくられ、第1回目の公演が開催されたのは昭和51年と昭和59年の第9回公演からは官民一体の制作委員会が組織され、文字通り「市民の舞台」となりました。「ファンタジー」はこれまで幾多の困難に直面するも試行錯誤をしながら1度も欠かす事なく開催されており、令和4年の公演が第47回目の舞台となります。
今年の脚本は遠野市在住の萩野友理恵さん作の「きつねの絵筆」。第47回目となる令和4年は2月の19日の公演と20日に2公演の3公演となります。「ファンタジー」は脚本のみならず舞台監督やキャスト、スタッフまで、遠野市民から募集して作り上げられます。
▲第47回市民の舞台 遠野物語ファンタジー「きつねの絵筆」。
毎年新しい顔ぶれがある中、もう何年も続けて参加しているベテランの人や、前回はキャストで出演していたけれど裏方の仕事も経験してみたいという人、初めてのキャストでいきなり主役?を見事にやってのける方もいます。
ところで、皆さんは毎年の舞台のスタートはどの段階だと思いますか?
「ファンタジー」は例年、公演の前年12月に初めてキャストや各スタッフ、組織委員会が顔を合わせる「旗揚げ会」が開かれます。今回もポスターのお披露目、市長による激励、それぞれの自己紹介と抱負の発表などが行われます。12月のうちから脚本の読み合わせが始まるキャスト、年明けから動き出す大道具・小道具・衣装・美術、舞台での稽古から合わせに入る化粧・床山・音響・照明、リハーサルや本番では舞台転換や会場係や駐車場係、また、「遠野物語ファンタジー」の特徴である劇中に取り入れられる郷土芸能やバレエ、市民バンドによる作曲から生演奏、少年少女もふくむ合唱隊の皆さんなど、総勢400人を超える仲間が公演を成功させるために一つになります。
そうしてむかえる本番。みんなやれることはやってきた。あとは自信を持ってそれぞれの役割をこなすだけ?とは言え、舞台裏は物凄い緊張感に包まれます。「上手くできるだろうか?」「失敗しないだろうか?」「お客さんはどのくらい来てくれているだろうか?」「笑ってくれるだろうか?」みんな一生懸命頑張ってきた分、不安も期待も大きくなるようです。
▲大道具がセットを作り、美術スタッフが絵を入れる(過去作品)。
「ファンタジー」の台詞はほぼ全て遠野弁です。濁音多めで、単語も短め。もちろん翻訳や説明などありません。それでも劇を通して伝わる温かさ、面白さ、もの悲しさ。お客さんのリアクションがキャストや裏方にも還り、最後に「遠野物語ファンタジー」の歌『偲しきょう郷の歓よろこび』をみんなで歌う時には、会場は大きな感動に包まれます。
「ファンタジー」は遠野市外からの反響も良く、昨年の10月には岩手県知事より「いわて暮らしの文化特別知事表彰」を受賞しております。遠野市では同時期に1月号で紹介したどべっこ祭りや昔ばなし祭りも開催されます。春を待つ民話の里・遠野を感じにいらしてください。
最後に、「ファンタジー」を成功させた後の打ち上げでは、みんな口々に「来年は自分は・・・」、「次の脚本は・・・」と先の事について話をします。つまり、この舞台に始まりも終わりもない、これからも伝えられ続いていくのが「遠野物語ファンタジー」なのです。(みちのく岩手事務所 佐々木 敬文)
▲本番前の会場。ステージ前からの生演奏と合唱が観客を惹きつける(過去作品)。
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第47回市民の舞台「遠野物語ファンタジー」
「きつねの絵筆」 令和4年2月19日、20日
※今年はコロナ感染拡大のため中止となりました。
遠野市民センター大ホール (一財)遠野市教育文化振興財団
https://tonojikan.jp/event/0219/
チケットの払い戻しについては、遠野市教育文化振興財団のホームページをご覧ください。
http://www.tono-ecf.or.jp/news/
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◆◆日常雑記◆◆
昨年末に宮城県の某温泉に宿泊した時のことです。硫黄の匂いの強い温泉らしいお湯につかって満足して翌朝の食事の時でした。突然火災報知器が鳴り始めて、火災を知らせる一斉放送が流れ出しましたのです。
職員さん方は落ち着いた表情で、「只今確認中ですので、分かり次第ご案内します」との話でしたが、一向に警報器と避難を誘導の録音声は止まず、職員による説明も、誘導もありません。せっかくの食事も味気なく終えて、不安な気持ちで部屋に戻って着替えやら片付等をしている最中も、全館の警報とアナウンスは続きました。
チェックアウトの時には警報等は収まっていましたが、それでも事情説明がないままなので、帰りにフロントで聞きましたら、涼しい顔で「結露による警報機の誤作動でした」との説明です。プロの仕事としては、お客様への説明が一番先と思うのですが、この対応にはがっかりしました。
何処かの「オオカミ少年」にならねば良いがと思うとともに、自分はお客様のお気持ちを最優先にと改めて思いました。
(みちのく岩手事務所 佐々木 泰文)
※写真と内容は直接関係ありません。