私たちの住んでいるこの地球とその衛星である月の距離は、平均して38万4000㎞と言われている。この距離は地球を9~10周する長さに相当すると考えれば、果てしなく遠く感じる・・・そんな月だが、地球上で最接近する場所がこの日本のとある場所にあるという噂を聞きつけ、先日出張がてら寄ってみることにした。
ここは静岡県浜松市天竜区。今から15年前に天竜市から浜松市に合併された行政区で、浜松市で1番面積が大きく、その大部分を森林が占め自然豊かな地域である。区の中央を一級河川・天竜川が流れており、河口から最初のダムの船明(ふなぎら)ダムを通り過ぎると、道路看板に「月3㎞」と出てくる。この場所こそが地球と月が最接近する場所。
それにしては空を見上げてもどこにも「月」は見当たらない。それもそのはず、この「月」というのは惑星の「月」ではなく、「月」という地名の小さな集落を指していたのだ。ここが「月」と名付けられたのは、今から遡ること600~700年前の南北朝時代に活躍した楠木正成公に由来しているとのこと。一見よくある面白い地名に見えて、実に長い歴史を持った「月」であった。(本部 高橋 瑞希)
※楠木正成に仕えた源氏の一族である鈴木左京之進(さきょうのしん)が、12 人の家臣を連れてここに落ちのびた際、それでもなお「楠木正成公の心の清らかさこそ、中空にかかる月のようである。私たちの心のよりどころを地名に残そう」として村の名を「月」とつけたとされている。