皆さんは〝蔵のある家”と聞くとどういうイメージを持たれるでしょうか?
豪邸?お金持ち?お城?など・・・歴史のある名家を思い浮かべるかもしれませんが、田舎で古民家の取り扱いをしていると〝蔵のある家”によく出会います。
蔵の中には金銀財宝はなく、当時は米などの農産物の貯蔵用に建てられたものが物置として使われていた場合がほとんどです。みちのく岩手事務所がある岩手県遠野市は、江戸時代に遠野南部氏1万2000石の城下町として栄えていました。遠野駅や市役所周辺の市街地は、その歴史の趣を残した街並み作りがされています。
事務所のすぐ裏手にあたる「蔵の道ひろば」は、リフォームされた土蔵などの趣がある建物の中に芝生が敷かれた公園となっており、イベント会場や観光の休憩スポットとなっています。かつて南部氏が治めた盛岡藩の中心にも、古い建物を活かした街並みづくりによって観光スポットになっている場所があります。それが今回ご紹介する盛岡市鉈屋町(なたやちょう)の「もりおか町家物語館」です。
この施設は、盛岡地区で最も歴史のある蔵元の一つで2006年まで酒造りが行われていた「岩手川」の鉈屋町工場の酒蔵を改修し、2014年に「もりおか町家物語館」として開館されました。母屋・文庫蔵・浜藤の酒蔵・大正蔵の4棟の建物の他、下屋の通路や屋外の広場を含めた6つのエリアで構成されています。
文庫蔵だった建物は展示スペースになっており、原敬元内閣総理大臣をはじめとした岩手の偉人や歴史の資料が常時並べられている他、2階は絵本などがあるキッズコーナーになっており、お子様連れでも楽しめる空間になっています。
続きの母屋へ入ると、高い吹き抜けの見事な和室が目に入ります。畳の上も見学OK、上り口の下駄箱に上靴を入れてお邪魔します。昔懐かしの引き出しのたくさんついた階段を登ると、2階の和室にはこれまた懐かしい家電製品や食事のサンプルの置いてある部屋も、まるでタイムスリップしたかのような〝映える” 写真が撮れる事間違いなしです。
続いて「大正蔵」を見てみましょう。大正時代に建てられたこの建物は、大きな貯蔵樽を置くのに合わせて作られたため1階の天井が高く、開放的な造りになっています。そのおかげもあり1階部分の「時空(とき )の商店街」はまるで昔の商店街がそのままアーケード街になったような空間になっています。
2階は展示スペースっとなっており、企画展が開催されている時には合わせて見学が可能です。最後に紹介する建物は浜藤の酒蔵。江戸時代に建てられたこの建物は、現在は酒蔵の歴史をつづったパネルなどが展示される浜藤(はまとう)ギャラリーとして開放され、舞台機能を持った浜藤(はまとう)ホールは音楽や演劇のイベント会場として貸し出されています。
土蔵を改修した建物の中で聴く音楽は格別で、演奏や歌声がダイレクトに心に響いてくるようです。先に紹介した遠野の蔵の道ひろばでも土蔵をリノベーションした飲食店での音楽ライブを何度も聞かせていただいており、土壁と音楽の相性の良さを改めて感じました。
みちのく岩手事務所が取り扱った物件にも、土蔵をお洒落なくつろぎ空間に改装し、音楽を楽しんでおられた方もいました。 「蔵つき物件?」「何に使うの?」「要らないよ」と思うような物件でも、引き継ぐ買い手さん次第では価値のある素敵な場所に変身するかもしれませんね。(みちのく岩手事務所 佐々木敬文)
もりおか町家物語館 https://machiya.iwate-arts.jp/
電話番号:019-654-2911/FAX:019-654-2913
住 所:盛岡市鉈屋町10番8号
休業日:毎月第4火曜日(その日が祝日の場合は、その翌日)及び12月29日から1月3日
営業時間:午前9時から午後7時(最終入場 午後6時30分)
*浜藤ホール(浜藤の酒蔵)は利用時のみ午前9時から午後9時30分