▲鬼婆が住んでいたという岩屋の笠石。
鬼婆伝説で有名な福島県二本松市の観世寺内にある『安達ケ原の黒塚』は能や謡曲、歌舞伎、浄瑠璃の演目にもなっています。『大和物語』で平兼盛が『みちのくの 安達ケ原の 黒塚に 鬼籠こもれりと 聞くはまことか』(拾遺和歌集)(安達ケ原の黒塚に鬼が隠れているというのは本当ですか?)と源重之の娘に宛てた有名な歌があります。この歌は直訳の解釈もありますが、ここでいう「鬼」とは陸奥(みちのく)という地方に住んでいる娘たちが表舞台に姿を現さないので「鬼」を掛けての言葉遊びだとも言われています。
この「黒塚」は江戸時代には松尾芭蕉が立ち寄り、明治には俳句で有名な正岡子規が『涼しさや 聞けば昔は 鬼の家』と詠んでいます。各著名人が訪れている「安達ケ原の黒塚」ですが、平兼盛の歌が詠まれる前から鬼婆伝説があったのか、それともこの歌が詠まれた後に鬼婆伝説が生まれたのかは定かではありません。二本松市へ行かれた際は興味がありましたら立ち寄ってみてはいかがでしょうか?(本部 井上 美穂)
▲福島県二本松駅。