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秋田◆北秋田市/マタギの里と秋田内陸線から【いくぞ!北東北・所長ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2021年6月24日

▲道の駅にある木造彫刻には「マタギの里」とある。

学生時代に読んだ宮沢賢治の物語に『なめとこ山の熊』がある。岩手県内にある「なめとこ山」の麓で熊を撃つことで家族の生計を支える主人公とそこに棲息する熊たちのお話しである。母親熊との約束や最後に主人公が熊たちによって見送られることなど、賢治ならではの死生観が色濃く出た作品だ。

こうした山岳地帯で狩猟を専業にする猟師を一般的には「マタギ」と呼ぶことがある。東北地方や甲信地方などに多いともいわれる。その中でも北秋田市にある阿仁(あに)地区の「マタギ」は平安時代までさかのぼるとされ、その歴史は古い。

▲「あにマタギの里」道の駅食堂にて。

そしてこの「阿仁マタギ」は単なる「ハンター」というよりも、「山の神を信仰し、規範を重んじ習俗文化を伝承する村社会の構成員として認め合ってきた存在」(「秋田マタギロード」広報ガイドラインより。令和3年2月)で、集団での行動が主であるため厳しい掟や独自の言葉もあったという。「マウンテン・サムライ」と呼ぶ人もいる。

北秋田市は秋田県内の内陸北部に位置し、1152平方キロメートルの広大な市域(東京二十三区の2倍あまり)に29500人ほどが暮らしている。2005年(平成17年)に鷹巣町、合川町、森吉町、阿仁町が合併してできた市だ。東南方向には樹氷も見られる名山の森吉山(もりよしざん・標高1454メートル)がある。

それぞれが独自の文化を形成してきた町だと伺ったのは、生まれも育ちも鷹巣町とおっしゃる鈴木さんからだ。奥様手作りの「バター餅」を山菜とともに振る舞っていただいたことがある。県産のもち米、砂糖、バター、小麦粉、卵黄、食塩、片栗粉だけで作られたお餅でコクがあり長く伸びる。

その鈴木さんから「いちど機会があったら綴子大太鼓(つづれこおおだいこ)を観にいらっしゃい」と誘われてもいる。ギネス認定された世界一の大太鼓で国の無形民俗文化財になっている。六張りある太鼓のうち最大のものはなんと直径が3.8メートルもあるという。

▲伊勢堂岱遺跡縄文館(2019年8月撮影)

その太鼓の音が響き渡る西側の広大な大地にあるのが「大館能代空港」で、あたり一帯は視界が開け、遠く白神山地が望める場所だ。そうした場所は縄文時代の遺跡が多い。ここ「伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡」もそのひとつ。ストーンサークルで知られ、縄文館の案内は地元の中高生たちがボランティアスタッフで頑張っていた。この近くには「JA 秋田厚生連」が運営する「北秋田市民病院」やのどかな「北欧の杜公園」もある。

▲地元中高生のボランティアが遺跡を説明してくれる。

さて、鷹ノ巣駅前の観光案内所で秋田内陸線のことを聞いてみた。

「ここが始発なんですね」とわたし。

「始発駅は阿仁合(あにあい)なんです」と案内所スタッフ。

この鉄道は角館駅と鷹ノ巣駅を急行なら二時間ほどで結ぶ単線だ。角館→鷹ノ巣が「上り」で鷹ノ巣→角館が「下り」である。時刻表を見てみると、確かに発着地は「阿仁合」となっている。

ではこの「阿仁合」とは?

江戸時代の前期に国内屈指の銅山として知られるようになり、1716年(享保元年)には銅山全国一と謳われ、日本中から炭鉱労働者が集まったといわれる阿仁鉱山。多くの寺院等がいまも阿仁駅周辺には残り、明治15年築の外国人官舎は東京銀座の鹿鳴館よりも古く、国の重要文化財に指定されているほど。

▲北欧の杜公園。

その阿仁合駅の西に「北秋田移住定住ネットワークセンター」がある。全国的にも珍しい二つの期間に分けた一棟貸しのお試し住宅だ。

7日間までのいわゆるお試しと30日間までの本格的長期滞在である。光熱費として一日あたり400円が必要とのことで、ひと月借りても12,000円。ご興味のある方はぜひともトライしてみたらいかがでしょう。(岩手・秋田・宮城担当 中村健二)

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お問い合わせは北秋田市移住・定住支援室(北秋田市役所2階、総合政策課内)
〒018-3392 秋田県北秋田市花園町19-1  電話0186-62-8002
北秋田市公式HP よりWEB 相談可
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物件ウォッチ誌上オンエアー(文化放送「大人ファンクラブ」毎週土曜日06: 25 より。中村の放送回は毎月第4週目)

北東北◆秋田/秋田へ熱い夏の旅 ~その2~【いくぞ北東北!中村所長・ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2019年11月23日

▲土地家屋調査士とともに図面を手に敷地境界を確認。

「北秋田市」というと県庁所在地の「秋田市」に隣接したイメージがあるが、実際には県都より北へ90㎞ほどの内陸部に位置していて、東は秋田犬で知られる「大館市」、西は風光明媚な五能線の始発駅(東能代駅)がある「能代市」に隣接している。

東京23区2個弱の面積がある当地は、内陸性気候のため寒暖の差が大きく、市役所のある「鷹巣(たかのす)」では(標高約30m)夏の平均最高気温が29.2度、冬の平均最低気温がマイナス5.1度。最深積雪量は131センチと豪雪地帯に指定されている。

▲綴子(つづれこ)の大太鼓の模型(大館能代空港にて)

当社は今年設立30年の節目に当たるが、この町に創業以来2件目の成約者が出た。首都圏在住者で、「川あり森ありキノコの原木あり」のこの地を田舎暮らし再出発の地に選んだ方だ。東日本大震災によって福島県内での定住を断念した経緯から、「過疎地こそが自らの生活を立て直す場所だ」との強い信念が芽生えたという。そして心温まる売主との出会い、近隣住民の人柄にも触れていく中で、この地への現実的な移住のプロセスがはっきりと見えてくるとともに、未曾有の原発汚染のため実現できなかった「山里の暮らし」を、条件が合えば来春にも始めたいと決心させた。

私はその方の北秋田市移住実現のために売主との間で不動産売買契約を仲介させていただくとともに、すみやかなお引き渡しに微力を尽くさせていただく僥倖に立ち合うことができた。(北東北担当 中村健二)

※北秋田市:平成17年に北秋田郡の鷹巣町、合川町、森吉町、阿仁町が合併して誕生。県の北部中央に位置し、西から南に秋田市、東に大館市・鹿角市、南に仙北市に接する。

中村龍潭寺

北東北◆秋田/秋田へ熱い夏の旅 ~その1~【いくぞ北東北!中村所長・ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2019年10月21日

今年の8月15日は、台風10号からの湿った暖かい空気が流入した影響でフェーン現象が起こり、秋田県北秋田市鷹巣(たかのす)は最高気温38.4度を記録した。その日全国で第3位の記録だという。

私はこのニュースを山梨から東京に向かう車内のラジオで聞いていた。「鷹巣」という地名を知っているリスナーがどれほどいらっしゃるのか、という疑問はさておき、ほんの1週間前に仕事で訪れた場所が天気予報ではあっても全国放送で流れたことに、なぜか少しばかり胸を張る心持ちがしたのだ。

あの日の奥羽本線・鷹ノ巣駅前は閑散とし、残暑の西日は厳しく、弘前に向かう乗客は数名ほど。こんな情景が蘇ってくるとともに、地元の高校生たちが推薦するラーメン屋には行けなかったなどと、少しばかりの後悔の念を抱きながら電車に乗り込んだ。

駅のホームには綴子(つづれこ)地区自慢の直径3.7mほどもある世界一の一番太鼓の模型がどーんと陣取っている。いま、この北東北が熱い。大館能代(おおだてのしろ)空港の北西に広がる伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡は、今から4000年ほど前の後期縄文時代の遺跡だ。

▲はるばる来たぜ「伊勢堂岱遺跡縄文館」

縄文館と遺跡群では、北秋田市の中高生がボランティア活動の一環として訪問客の対応に当たっている。遺跡群に向かう道中にはサケの遡上する小川、その近くの沢筋には熊も生息しているという。万が一のため、私のような訪問客は鈴を渡され、その後ろには用心棒よろしく屈強な事務所スタッフも帯同する。

四つのストーンサークルがあるのは高台の眺めの良い場所だ。彼方には白神山地も広がっている。直径30mほどの輪を形成する無数の石は、ソリ状の運搬機によって運び込まれたという。その轍が今も残る。

大小の長方形をしたそれぞれの石はある規則性を持って並べられ、そこが「古代の祭祀」をつかさどってきた特別な場所であることを表している。縄文人の住居跡などではないのだ。

この地域に出土する一級の遺跡群は、県を超え津軽海峡を超え、北東北と北海道の南部に燦然と輝く歴史の中心地として、今ふたたび脚光を浴びはじめている。そして2021年のユネスコ世界文化遺産登録を目指すため、最先端で活躍しているのが4000年の歴史を知るこうした地元の中高校生たちなのだ。(つづく)

▲縄文館でガイドのボランティアをする地元高校生。

※北秋田市:平成17年に北秋田郡の鷹巣町、合川町、森吉町、阿仁町が合併して誕生。県の北部中央に位置し、西から南に秋田市、東に大館市・鹿角市、南に仙北市に接する。

中村龍潭寺