先月号で執筆した「マダニに注意」の現場にて、もう一つ、しみじみ考えさせられたことをお話しします。
売却依頼主は相続で引き継いだ兄妹。生まれ育ったご実家でありましたが共に都会に出て、ご両親亡き後、共に帰ることはないという理由でした。依頼を頂いたのは昨年秋、家族、親戚で家財道具類の撤去作業の最中。
母屋は白蟻による床の腐食が大きく雨漏りもあり、更に、廃屋同然の別棟が一棟、農地の地目もありました。さらに近隣も前後が古い空き家で、環境的にもあまり良いとは言えず・・・売却にはかなり厳しい、価格がつけられない状態でした。
「難しい物件であるとは私共も重々承知しています。ただこの場所が朽ちていくのだけはちょっと寂しくて・・・この別棟の解体撤去費用が捻出できれば、価格にこだわりはありません」というご意向で、地元にも多数不動産会社があるにもかかわらず、東京の弊社へ依頼してくれた厚意に応えるため売却を受託しました。
その後、売主はご自身で別棟を解体し、地目の変更まで完了させました。地元を離れていながら馴れないことに責任を持って行動され、売却できる状態に整えて下さったことに脱帽です。今後自分達では使うことのない家に、手間暇をかける所有者様の心意気を、是非皆様に知って頂きたくご紹介させて頂きました。物件はその後無事、買主様が見つかりました。(本部 金澤 和宏)