ブログ

山梨◆甲府市/御書印帖と印伝栞 ~ その一 ~【いくぞ!甲州・所長ふるさと随想録】

この記事の投稿者: 代表取締役・中村健二

2021年2月19日

▲御書印帖(表紙)。

昨年三月一日より始まった「御書印プロジェクト」。それぞれの地域に根付く書店が参加しているのが特徴だ。その数は全国で二百二十五店(二〇二〇年十二月一四日現在)あるという。北海道の利尻島から沖縄県の浦添市まで全四十七都道府県にまたがり、参加書店は列島を縦断しているのだ。

たとえば、わたしが以前慣れ親しんだこともあった静岡県浜松市にある明治五年(一八七二)創業の谷島屋本店・連尺(れんじゃく)店も含まれている。「御書印帖」を入手するにはお目当ての書店に足を運んでいただき、発行手数料の二百円(税込)を払うこと。各店で発行している曜日や時間帯が異なるためHP 等で事前に確認することが必要かも知れない。

また、東京・荒川区の渡邉製本が装丁した特装版の「御書印帖」は二千円(消費税別途)。表紙は箔押しが目立つようにと「はいみどり色」のクロス仕様。サイドにベージュの細いゴムバンドを掛けている。見返しは「にぶ桃色」で春にふさわしく華やかな色合いが特徴だ。

▲特装版の御書印帖。

印刷会社に勤める学生時代の同級生によれば、和紙を使った伝統的な和を表す色がいま人気を集めているのだという。ざわめく世相のなかで何かしら心を落ち着かせるのかも知れない。 

山梨においてこの「御書印帖」を発行しているのは、甲府市貢川(くがわ)にある朗月堂(ろうげつどう)書店。甲府駅からも中央道甲府昭和インターからも車で数分のところ。建物は三棟あり参考書・漫画のA館、生活趣味のB館、新刊・専門書のC館に分かれている。創業は明治三十五年(一九〇二)というから、今年で百十九年になる山梨県内の老舗中の老舗店。北杜市白州町在住の冒険作家・樋口明雄さんの新刊もいち早く紹介している。しかもサイン入りで。

個人的には、戦後の昭和二十三年創業で真空管アンプの視聴会や無線講習会を運営してきた甲府市伊勢の丹沢(社名は丹澤)電機とともに気に入っている店だ。いま密にならずに静かに時間を過ごせる場所としては、わたし的にはこの両店はかなりおすすめだ。

さて、この「御書印帖」だが表紙を繰った一ページ目に朱のスタンプとともにご当地作家のひと言が添えられている。これがなかなか味わい深い。朗月堂書店では林真理子さん、ではなくわたしの好きな辻村深月さんの、『かがみの孤城』からの一節。こんな文章だ。

「~その鏡が日差しに照らされ、虹色に少し、輝いた。~」孤独な若者たちを虹のように結んでいく鏡の中の世界。書店員にとっても思い入れのある作家であり作品であるのだろう。毛書体の直筆文字で書かれている。辻村さんも書くスピードがものすごく早そうな作家ですね。

ちなみに岩手県盛岡市にある東山堂(とうさんどう)の御書印帖は石川啄木、ではなく宮沢賢治。「~永久の未完成 これ完成である。~」これは賢治が芸術について語った「農民芸術概論綱要」の中の一節だといいます。なお、「御書印店を訪れるにあたり、各地域の状況をふまえて慎重に行動してください。」と御書印プロジェクトのHP でも注意喚起をしているように、いまだ感染拡大を続ける新型ウイルス禍の状況においては、慎重に行動することを心がけていきたいとわたし自身これからも肝に銘じている所存。

では、もしこれから移動することがもう少し容易になれたならば行ってみたい書店はどこか? そしてその作家のひとことは?

わたしにとっては、京都であり、島根であり、愛媛であり、熊本であると思う。山梨県内では実は昨年十一月の終わりまで、もうひとつ県内書店の連携イベントがあった。それは「印伝栞」。書店をめぐる冒険譚は来月号でも引き続き書きますので、ぜひご覧になってみてください。(八ヶ岳事務所 中村健二)

▲朗月堂書店(甲府市貢川本町13-6、電話055-228-7356)